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2014年3月

2014年3月16日 (日)

ロング・ショートについてのお話 その⑧

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

 

・サヤ取り投資の初心者の方は、まずこちらからお読みください。

 

サヤ取ブログロングショートヘッジ取引

 

 

・今までの7回分のメインテーマを読みやすいようにまとめておきました。

 

ロングショート

 

ロングショート

 

ロングショート

 

ロングショート

 

ロングショート

 

ロングショート

 

ロングショート

 

 

・個人投資家向けのサヤ取り関連業者の情報をまとめておきました。

 

サヤ取り(ペアトレード)関連業者一

 

 

※【ロングショート】【ロングショート】が基本説明、【ロングショート】【ロングショート】がこのブログの軸となる部分です。なお、システムを自作される方は、【ロングショート】【ロングショート】を参考にしてください。【ロングショート】は補足部分となります。間違っている部分は、時間があれば訂正しておきます。

このブログの内容だけでも実践の70%くらいをカバーできると思います。また、私が実践では使っていない指標も参考までに入れておきました。

 

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ロング・ショートについてのお話 その⑦

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

今まで書いた記事を読み直してみましたが、わかりにくい部分も多かったので、ここまでの復習を兼ねて、特に重要と思われる項目にかぎって補足していきます。なお、今までの内容の補足説明となりますので、少し難しい話になります。しっかり復習しておいてくださいね。

 

ロングショート その⑦-1相関係数の弱点とβ値の重要性

 

ロングショート その⑦-2α値の算出方法と組み合わせの自由度

 

ロングショート その⑦-3ロングショート型とレラティブバリュー型

 

ロングショート その⑦-4クロスボーダー裁定行為について

 

ロングショート その⑦-5サヤ取り投資がうまく行かない理由①

 

ロングショート その⑦-6サヤ取り投資がうまく行かない理由②

 

ロングショート その⑦-7入門編を終えるにあたって①

 

ロングショート その⑦-8入門編を終えるにあたって②

 

 

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2014年3月15日 (土)

ロングショートについてのお話 その⑦-8【入門編を終えるにあたって②】

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

おそらく、このブログでしか書く機会も無いと思うので、最後に書いておきます。

 

私自身の備忘録も兼ねて。

 

 

絶対の正解など存在しない

 

 

投資はもちろんのこと、この世界に「絶対の正解」は存在しません。

遠い日の記憶を辿りながら私の実体験を書き残しておきます。

 

19987月、スイス・ジュネーブ。国境を超えた隣国のフランスではサッカーのワールドカップが開催され大変な盛り上がりを見せていました。また、翌99年の欧州統合通貨(ユーロ)の発足に向けてヨーロッパ諸国が足並みを揃えていた頃の話です(まだフランスフランやドイツマルクの時代ですw)。

当時、ジュネーブには、いわゆるプライベートバンクと呼ばれる富裕層専門の銀行が立ち並ぶ金融街がありました(もちろん今もありますよw)。私は、銀行の扉の向こう側に1度だけ足を踏み入れたことがあります。

言っておきますが、私は千葉県の一般庶民の子どもです!私の友人の祖父の方が非常に裕福な方だったため、どさくさに紛れて入り込めただけのことですw

 

銀行の中はカウンターが完全個室になっていて、そこでバンカーとのやり取りが行われていました。「キャッシュ比率はこのくらいで、クーポン債がこういう比率で5年後にこれとこれが償還になって、償還予定の金額がいくらくらいで、この償還予定金額を株式で運用して。。。」

0のケタがあまりにも大きすぎて私には理解不能でしたが、大人になってから、「仕組み債」の商品のようにポートフォリオを設計していたようだということがわかりました。

私は非常に気になったので質問しました、「何でわざわざこんな面倒くさいことしているんですか?」、と(笑)

担当バンカーの方と友人の祖父から全く同じ答えが返ってきました、


「世界中、いつ、どこで戦争やテロ、災害などがあるかわからないから、いろいろな商品や地域に分散して資産を守っているんだよ。万が一、どれかの資産価値が0になっても、どれかが生き延びれば全部の資産は失われずに済むからね。これはリスクヘッジと言う考え方なんだ。株式と債券、それぞれの地域の通貨も違う値動きをするから、うまくブレンドして組み合わせるとプロテクトが効くんだよ」。


さらに。。。


「そうそう、スイスが永世中立国でいられるのも同じようにプロテクト機能を効かせているからこそなんだ。この国にはボーディングスクールがたくさんあって、世界中から政治家や実業家など有力者の子どもたちを集めて教育をしているんだ。だから子どもたちを担保(人質)にすることで、この国にはどこの国も攻撃できない仕組みになっているんだよ。なかなかのリスクヘッジだろ?」。

 

何ともw

 

政治的な話はここではしません。とりあえず当時16歳の私にわかったのは、「お金持ちは世界中のいろいろな商品に分散して投資を行っている」ということ、もう1つは「目の前の老人を誘拐したら身代金がたくさん取れる」ということでした(笑)

 

それから約5年後。


学生投資家になった私は、異なる2つの考え方に出会いました。

 

1つは、20039月(当時21歳の時)に訪れたアメリカ・ラスベガスでの出来事。

ホテルLUXORのカジノで同席したユダヤ系の個人投資家の方が、せっせと赤と黒のボードの上にチップを乗せている光景を見て、あの日の記憶が甦りました(いわゆるアウトサイドベット)。まさかと思って理由を尋ねてみました。

彼は私にこう言いました、「長くゲームを続けるコツは分散することだよ」、と。


ユダヤ系の特徴は、一か所に資産を留めておくよりも、できるだけ多くの国や地域、株式や債券など複数の金融商品に分散して投資する傾向があります。これは彼らの思想の原点である「タルムード」にも書かれています(「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な格言はここから来ている)。ユダヤ人の悲しい歴史を考えれば、バビロン捕囚以来、祖国を追放された彼らには、しぶとく生き延びるためのDNAが深く刻み込まれているようです。

彼らは、子弟教育に関しても、一人はアメリカへ、一人はヨーロッパへ、もう一人はアジアへと、分散して子どもたちを留学させる傾向があります。「誰かが死んでも誰かが生き延びれば次の世代へとDNAを継承することができる」、何とも合理的な考え方です。『お金持ちには「子ども」はいない、「相続人」がいるだけ』。タルムードの言葉です。

 

もう1つは、20047月(当時22歳の時)に訪れた香港での出来事。東シナ海上空で発生した台風の乱気流の中を、天空の城ラピュタのパズー少年のごとく飛行機が突入して行った記憶があります。マジで死ぬかと思いました(笑)

幸運にも、香港を代表する個人投資家の方の誕生日会に出席させていただける機会があり、数日後、彼のディーリングルームに招待していただいた時の事です。

私はそこで信じられない衝撃的な光景を見ました。おそらく私の生涯で忘れることはないでしょう。

その方は、証券会社のOBをアナリストとして雇用し、たしか4050銘柄くらいの銘柄を絞りに絞って、わずか2銘柄に莫大な資金を集中投資していました。もちろん片張りオンリーです。

私は恐る恐る質問しました、「この投資方法は個別株に2つしか分散していませんよね?これって予測がはずれたら莫大な損失になりますよね?この投資方法はハイリスクハイリターンではないんですか?大変失礼ですがポートフォリオってご存知ですか?」

ただちに反論が返ってきました。


「バカ者!分散して投資するのは、自分の選択した銘柄に自信を持っていないからだろ?そんな中途半端な意思決定では投資は絶対にうまく行くわけがない。こっちは経営者の素性から企業の主力商品、業績、市場の占有シェアに至るまで、収集できる情報は全部集めさせて徹底的に分析しているんだ、わかるか?やると決めた以上は徹底的にやるんだ、投資は遊びじゃないんだよ!」。

私は疑問に思って質問しただけなのに、なぜか延々と説教を喰らってしまいましたw


華僑系の特徴は、戦争で言えば人的資源・物的資源を1箇所に集中する「局地戦」のように、大金を1箇所に集中して投資する傾向が強いように思います(ルーレットで言えばストレートアップベット、1つの数字に賭ける行為)。

これは投資にかぎらず商売にもその傾向が強いように思います。商売で稼いだ利益は株式や不動産などの不労所得で増やし、不労所得だけで生活できる水準に達した後でも、彼らは自分が選んだ商売そのものに一切手抜きをしません。なお、子弟教育だけは分散させているようです。

 

言葉足らずなので誤解のないように申し上げますが、「○○系がこういう考え方である」というステレオタイプ的な見方や偏見ではなくて、あれから約10年が経ち、その後、私が実際にお会いした方々は、思い出せるかぎり上記のような考え方をする傾向が強かったように思います。あくまでも私の実体験でのお話です。


「ユダヤ系」と「華僑系」、どちらも祖国を離れて異国で暮らすディアスポラ(離散の民)ですが、考え方が真逆だったことが、当時の私にとっては非常に新鮮でした。

この両者は、書籍等には商売上手のイメージで描かれていますが、少なくとも私の経験上、考え方については真逆の傾向があります。

なお、イスラエル出身のユダヤ人はお世辞にも商売上手とは思えませんw


 

投資を始めた頃に出会った2つの異なる考え方。



どちらも一理あって正しい考え方だと思います。


 

ただし教科書的に言えば、ユダヤ系の個人投資家の方の考え方は、「期待収益率」の観点からすれば間違った考え方であり、華僑系の個人投資家の方の考え方は、「リスク分散」の観点からすれば間違った考え方です。


私は、「世の中には絶対に正しい正解は存在しない」「どんな考え方にも長所と短所が存在する」ということを、体験しました。

さらには、十分に分散する資金があるお金持ちであっても、必ずしも全員が分散投資をしているわけではないという事実があることがわかりました。

私は、ジュネーブでの経験から、「お金持ち=分散投資をしてリスクヘッジをする」ものだとばかり思っていたので、香港での出来事は衝撃的でした。

 

一方はギャンブル、もう一方は金融取引。ラスベガスと香港の話は、同じ土俵で比べていないので相対比較ができるものではないのですが、投資を始めた頃、2つの場所で「全く異なる考え方」に出会いました。

 

私はいろいろ考えた結果、「ゲームを長く続ける」というユダヤ系の個人投資家の方のベット(賭け)の仕方を参考にすることにしました。こちらの考え方を選んだ最大の理由は、単に私の価値観の問題です。

おそらく私の価値観は16歳の時の経験が強烈に脳に刷り込まれてしまっていたのだと思います。最初にもう一方の考え方に出会っていたら、このブログは全く違う内容になっていたことでしょうし、そもそもこのブログを書くことはなかったでしょう。

 

入門編を終えるにあたって①】にも書きましたが、『「増やす」よりも「減らさないように」投資するという考え方そのもの』が、結局のところ、ゲームを長く続けるコツだと思っています。

 

ですから、このブログも「①ロングとショートの両建てポジションで銘柄を分散」し、「②ロングとショートをさらにグループ化して分散」するという、ポートフォリオ投資の考え方を一貫して主張して来ました。

 

時々、ふとあの頃を思い出していろいろ考えるのですが、職業として金融取引をするようになった今でも、どちらに優位性があるのかは、正直言って未だにわかりません。

 

 

【私のトレードスタイルの原点】

 

 

マーケット参加者の方は、片張り投資でも両建て投資でも、各自のトレードスタイルをお持ちだと思います。

 

誰もが初心者の頃があって、何だかわけもわからず投資して、たまたまうまく行ったり、うまく行かなかったりという経験を繰り返して来られたことと思います。

まさか、最初から100%完全に自分のオリジナルでトレードスタイルを確立して来られた方はいないでしょう。

少なからず、今までの人生から形成してきた価値観をもとに、誰かしら参考になる方の手法や考え方を完全にコピーするところから始まって、少しずつ自分なりのスタイルを確立して来られたことと思います。

 

私の現在のトレードスタイルは、2005年(当時2223歳の時)に読んだ2冊の本が基本軸となっています。あれから約10年が経った今でも私の考え方に非常に強く影響を与えています。

 

1冊が、シノビーさんの『内藤忍の資産設計塾―あなたの人生目標をかなえる新・資産三分法』です。

 

書店に行くと大量の資産運用や株式投資に関する書籍が並んでいます。しかしその多くは「誰でも」「自動的に」「短期間で」「絶対儲かる」といった無責任なタイトルの役に立たないものです。あるいはその逆に学者が書いた理論的には正しいが実際の投資には使えない本や経済評論家が現場の知識もなく「あるべき論」を振り回しているような書籍ばかりです。』(内藤忍(著)『内藤忍の資産設計塾―あなたの人生目標をかなえる新・資産三分法』自由國民社(2005/01))

 

もう1冊が、安間伸さんの『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ(3「錬金術入門」篇』です。

 

なぜ金持ちはどんどん金持ちになり、ビンボー人はずっとビンボーから抜け出せないのか。それは、投資に限らず日常生活も仕事も「ものごとの考え方と行動」がそうなっているから。-省略- 錬金術は裁定であり、人生もまた裁定の連続である。』(安間伸(著)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ(3「錬金術入門」篇』東洋経済新報社 2013/5/2)※書籍版は2005年)

 

上記2冊は「考え方」の本です。いずれも「相場技術」の本ではありません。


私のブログで具体的な数値や具体的な組み合わせなど「相場技術」の内容を書かなかったのは、しょせんは一過性の情報であり、いずれ風化してしまうものだからです。かつて、某SNSに検証結果やパラメータなどの情報を投稿して、かなりアクセスがありましたが、残念ながら今となっては全く使い物になりません。当時と今では、状況もだいぶ変わりました。

一方、「考え方」はしっかりと身につければ、その後の投資活動において、ブレない基本軸ができると思います。時代が変わっても、物事の本質は変わらないと思うのです。


考え方」と「相場技術」。ブログの観点から見ればアクセスが多いのは圧倒的に後者ですが、私は前者の情報を求めている方だけに読んでいただければ満足です。

 

私はシノビーさんの本からは「ポートフォリオ」の考え方を、安間さんの本からは「逆張り投資」と「裁定取引」の考え方をしっかり学びました。もちろん他にも書籍はたくさん読みましたが、「当時の私が求めていた考え方」と「上記2冊の著者の考え方」が完全に一致したので、自分の考え方の基本軸にすることに決めました。

忘れもしません、学生時代に住んでいた東京・自由が丘にあるピーコックの4階の本屋さんで購入して、ウェンディーズでフライドポテトを食べながら夢中で読んだことを、今でも鮮明に覚えています(両店ともすでに閉店してしまいましたけど。。。)。

 

私のブログで示した考え方は、上記2冊の書籍のコピーの上に成り立っています。私のブログは両建て取引がメインテーマなので、「書いている内容」は全く違いますが、「考え方の本質」は同じだと思います(【RPGを使ってポートフォリオの本質を考えてみる】参考)。

 

私のブログを読んで、参考になったという方がいらっしゃれば是非読んでみてくださいね。

 

もちろん、「絶対の正解」ではないことを改めて申し上げておきます。

 

 

【次に必要としてくれる誰かのために】

 

 

私が書いた内容は今まで先人たちが残してくださった書籍や文献を簡単な言葉にまとめただけ、ただそれだけです。

 

サヤ取り投資=儲かる話」ではありません。儲かる情報は基本的に他人には教えません、自分だけでこっそり儲けます(【期待値が高いと満足度は低下する~うまい話にはウラがある~】参照)。

 

とはいえ、サヤ取り投資を実践してみたいと思っていらっしゃる投資家の方が少なからず存在していることは事実です(実際このブログにもそれなりにアクセスがあることがわかりました)。

 

このブログの途中から、誰でも簡単に検証ができるようなサヤ取りソフトを作ってレンタル商売をしようかとも考えたのですが、やったところで割りに合わなそうなので、私の得意な「逆張りの発想」を使ってユニークなサービスを提供できればいいなと思っています(【システムその⑤-1】参照)。


というか、取引時間中にサポート業務とか絶対ムリだし、自分の業務で手一杯ですw

 

ゴールドコーストの話のように、金脈を掘り当てるために多くの開拓者が一発逆転を狙って押し寄せたエピソードは有名ですが、実際に大儲けをしたのは、「開拓者」ではなく、「彼らに工具を売りつけた業者」だったという何とも笑えないオチがあります。

 

「マーケットからお金を稼ぐ」のと、「マーケットからお金を稼ごうと思っている投資家に仕組みを提供してお金を稼ぐ」のは、どちらが効率的な商売なのかは私にはわかりません。

 

もしかしたら、読者のみなさんは、いつかどこかで私が作ったサービスの広告を目にされることがあるかもしれません。その時はこう思ってください。

 

広告は、平凡な製品やサービスをつくってしまったことに対して、あなたが支払う代償である」、と。

 

これは、Amazon.com創業者のジェフ・ベゾス氏の言葉ですが、私も平凡なサービスしか提供できないと思うので、予め申し上げておきます(笑)

 

悔しいですが、彼の言葉には反論できません。

 

読者のみなさんは、「平凡な金融サービス」ではなく、ぜひ「マーケット」に授業料を払ってくださいね。

 

本を読んだりセミナーに行くのもけっこうですが、何度も投資して、たくさん失敗してフィードバックしたほうがよほど上達すると思いますよ。知識と経験はバランスよくブレンドしてくださいね!

 

最後になりますが、かつて「半学半教」を提唱した福沢翁のように、教える者と学ぶ者の分を定めず、相互に教え合い学び合う仕組みを世の中に提供していくことができればいいなと思っています。

 

私もまだまだ修行中の身です、これからもマーケットにたくさん授業料を払わなくてはいけませんね(笑)

 

 

以上で、このブログは一度終了します。


機会があれば続きを書こうと思います。


最後までお読みいただき本当にどうもありがとうございました。

 

それでは、また!

 

 

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ロングショートについてのお話 その⑦-7【入門編を終えるにあたって①】

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

このブログでは、基本的な統計知識を使ってヘッジ取引の入門レベルの内容をひと通り説明してみました。

当初は理論的な内容を適当にまとめて12か月くらいで終わらせるつもりでしたが、トレーダーの立場として、やはり前提となる理論が間違っている以上、教科書的な説明だけでは不十分だと思い、ついつい余計なことまで書いてしまいました(笑)

 

なるべくわかりやすく書こうと心がけましたが、

いざやってみるとなかなか難しい作業でした。

 

理論としては間違っていたことも書いてしまったかもしれませんが、「理論は大事だけど、依存し過ぎてしまうことの危険性」と「前提となる理論が間違っているという事実」を誰かが伝えないといけないと思ったので、批判を覚悟でいろいろ書くことにしました。

 

賛否両論あるかもしれませんが、それはそれで喜ばしいことです。

 

私にとっては、今までインプットした知識や実体験を第三者にアウトプットする作業はとても楽しい経験でしたが、やはり性格上、あまり目立たず、地味にトレードやっているほうが向いているのかもしれません。。。

 

とりあえず、今まで書いた要点を以下にまとめ、このブログはいったん終了することにします。最後の備忘録として、現時点で書き残しておきたいことを思いつくかぎり書いておきます。次に必要としてくれる誰かのために。。。

 

長くなります、もちろん余計なことも書きます!

だから2回に分けて書きます(笑)

 

どうぞ最後までお付き合いください。

 

 

【今まで書いた要点の復習】

 

 

サヤ取り投資の要点について、【理論】【現実】【改善策】を以下にまとめておきます(【ロングショート③】と【ロングショート⑤】がこのブログの中核です)。

 


1. サヤ取り投資(ストラドル)は裁定取引(アービトラージ)ではない

 

【理論】

サヤ取り投資は異なる2つ以上の銘柄ペアを、一方をロング(買い建て)、他方をショート(売り建て:空売り)し、同時に組み合わせて売買する。そのため、ロングまたはショートした双方の利益と損失を相殺し、相場変動によるリスクをヘッジする取引である(すなわち、一方の銘柄に対し、ペアとなる銘柄はヘッジ(保険)機能を果たす)。

そのため、株式市場全体がある方向に動くマーケットリスクを、ヘッジ機能を用いて中立的(マーケットニュートラル)にし、いかなる相場状況であっても絶対的にプラスリターンを目指す投資戦略である(【ロングショート①】参照)。

 

【現実】

両建てしたポジションは、極論を言えばロング方向とショート方向にそれぞれ片張り投資をしているのと大して変わらない」。

裁定取引は、一物一価の性質上、市場の非効率性を「α」とし、マーケット変動による「β」を完全に排除した合理性のある投資方法である。

その一方で、サヤ取り投資はニ物二価の性質上、価格差の拡大・収斂はあくまでも確率・統計によって「α」の方向性の分析をしているにすぎない。さらに、βリスクを完全に排除できないため、100%合理性のある投資方法とは言えない(【サヤ取り投資がうまく行かない理由①】参照)。

 

【改善策】

比較的高い相関性を担保とした取引に過ぎないため、2つの異なる銘柄の価格差は平均値に向かって必ずしも収斂する保証はない。価格差が一定水準に拡大した場合は、ただちに該当する銘柄ペアの取引を中断すること!(【サヤ取りブログ~ロングショートを用いたヘッジ取引~2.参照)

確率論による手法である以上は、「銘柄分散」と「試行回数を増やす」ことで、ポートフォリオ全体でトータルのプラスリターンを狙うくらいしか改善策は存在しないと考える。

サヤ取り(ストラドル)の「α」と裁定取引(アービトラージ)の「α」の本質は異なる点に注意のこと!



2. サヤ取り投資はβリスクを完全に排除できない投資方法である

 

【理論】

できるだけ標準偏差の同じくらいの銘柄を組み合わせる。そうでなければ、βリスクを排除しきれず、結果としてボラティリティの大きい銘柄の片張り投資と変わらなくなってしまう(【ロングショート③】ステップ3-9)。

 

【現実】

αを追及するサヤ取り投資も、結局のところβをニュートラル化できないため、マーケットの変動リスク(βリスク)を完全に排除することはできない(【相関係数の弱点とβ値の重要性】参照)。

 

【改善策】

銘柄をできるだけ分散し、ポートフォリオ全体でβ値を極力ニュートラル化することが改善策になると考える。

 

 

3. 「ロングショート」と「レラティブバリュー」は完全なるマーケットニュートラル投資法ではない

 

【理論】

「ロングショート」、「レラティブバリュー」いずれの投資方法もマーケットニュートラルの考え方に基づいているため、アクティブ投資に比べてリスクが少ない投資方法である。

 

【現実】

「ロングショート」→「ボラティリティの高い急激な上昇相場と、大暴落には対応しきれない」

「レラティブバリュー」→「ボラティリティの低いレンジ相場では戦略がうまく機能しにくい」

 

【改善策】

「ロングショート」と「レラティブバリュー」の長所と短所を組み合わせることにより、ポートフォリオ全体でβ値を極力ニュートラル化することが改善策になると考える(【ロングショート型とレラティブバリュー型】参照)

 

 

4. 価格差の分析を行うときは、複数の指標を組み合わせること。

 

【理論】

確率・統計に基づいたテクニカル分析は、マーケット分析を行う際に非常に有力なツールとなる。

 

【現実】

確率・統計によって算出された数値そのものは正しいが、その数値は必ずしも実践では正しくないことが多い。

 

【改善策】

テクニカル分析は万能なツールではない。たしかに、確率・統計はマーケットアプローチの1つの手段となり得るが、依存し、過信すべきではない(【サヤ取り投資がうまく行かない理由②】参照)。

ベキ分布にしたがうとされている現実のマーケットにおいて、私たちは正規分布を前提としてマーケット分析を行っている点を心に留めておくべきである(【逆張り投資の注意点】参照)。

テクニカル分析を行う投資家にとっては、指標を単体で使うことに効果がないことは既に承知済だと思うが、自らが妥協できる条件が最低2つ以上揃うまでは安易にエントリーすべきではないと考える。

どんな条件で取引するにせよ、結果については、「マーケットは常に正しい、間違っているのは投資家自身である」ということを忘れずに!

 

 

【確率論は「数」の勝負である】

 

 

なんだかエラそうにこのブログを書いてきましたが、私も結局のところ100%の確率で収益を上げられる天才トレーダーではありません。

ですから日々、頭に汗をかきながら端末を叩いてポジションをあれこれ悩みながら設計しています。

私が少しでも銘柄の分散数を増やしたほうがいいと言ったのは、確率論は「数」の勝負であるという経験則からです。つまり「トータルで損益がプラスになればOK」という発想があるからです(【RPGを使ってポートフォリオの本質を考えてみる】参照)。ですから、勝率はあまり気にしません。

11本の「木」には必ず何らかのクセがあって、どの銘柄ペアとどの銘柄ペアを組み合わせればお互いの弱点を補完しながら収益化できるのか。さらには、どの銘柄ペアグループとどの銘柄ペアグループを組み合わせれば収益化できるのか、日々の業務の中で仮説と検証を繰り返しています。

「木を見て森を見ず」という言葉があるように、「木(個々の銘柄ペア)」の損益はあまり気にしません。うまく行かなければドライにロスカットする、ただそれだけ。プログラムが自動的に執行してくれます[1]

それよりも「森(ポートフォリオ全体)」を見てプラスになっていれば、「あ、これで自分の仮説は正しかったんだな」と判断しています(【システム④(ステップ4-1.)参照】)。

 

また、トレードの際に心がけていることが2つあります。

 

1つは、「30」銘柄くらいに分散し、設定したアルゴリズムで「30」回くらいの運用テストを行うようにしています。

統計上、「正規分布である」と仮定するためには、最低限「30」の標本データが必要と考えられます。この「30」という数字は、統計学では「マジックナンバー」と呼ばれており、様々な結果を導き出すための非常に重要(最低限必要)な数字となっています(「マーケットは正規分布ではない」と書いておきながら「おいおいw」と言われてしまいそうですが、結局このような分析手法以外に妥協できるアプローチ方法が無いのだから仕方ありません)。

結局、確率論の勝負ですから、「銘柄の分散数」と「試行回数」を増やしていくしかないわけです。

銘柄ペアの1セットや1回の試行回数が「点」とするならば、分散する銘柄ペア数や運用テストの試行回数は「点+点+点+点+点」のようになり、点をつないで行くと面になります。この面を作るために私は「30」という数字を意識しています。「木」ではなく、「森」を見るのと同じように、ポートフォリオの本質は「点」だったものを「面」と捉えるための概念だと考えます(トレード以外の商売でもこの考え方は大切にしています)。

30銘柄に分散する投資金額がない場合であっても、銘柄ペアを分散し、1つ銘柄の損失をポートフォリオ全体でカバーできるようなポジション設計をイメージしてみてください。

1度大きな損失を出してしまうと、元の状態に回復させるのは本当に大変な作業です。ですから、『「増やす」よりも「減らさないように」投資するという考え方そのもの』が、結局のところ、ゲームを長く続けるコツだと思っています。難しい技術は必要ありません。これは私の経験則です。

 

もう1つは、投資する銘柄ペアは等価金額に近いペア同士を組み合わせています。さらに重複する銘柄はどちらかを除外するようにしています。

投資する銘柄ペアを等価金額に合わせる理由は、特定の銘柄ペアに偏りがありすぎると、特定の銘柄ペアの比率が大きすぎて、急激な損失が発生した場合、ポートフォリオ全体でカバーしきれないためです。

重複する銘柄を除外する理由は上記と同じように、突発的に生じる個別銘柄特有のリスクを一定水準に保ち、ニュートラル化させるためです(【システム④(ステップ4-1.)参照】)。上記と同様に、特定の銘柄ペアに偏りがありすぎると、特定の銘柄ペアの損失比率が大きすぎて、ポートフォリオ全体でカバーしきれないためです。

 

確率・統計上、銘柄を分散し、試行回数を増やせば、勝率は大数の法則にしたがい、50%に近くなって行きます(理論上は。。。)。

ですから、勝率は50%程度でかまいません、それよりも確実に『「利益」-「損失」=「+」』となっていることのほうがよほど大事だと考えます[2]

 

・ロング銘柄が「損失」でも、ショート銘柄が「利益」ならばOK

・ロング銘柄グループが「損失」でも、ショート銘柄グループが「利益」ならばOK

・ロングショートグループが「損失」でも、レラティブバリューグループが「利益」ならばOK

 

サヤ取り投資が初心者でも簡単に儲かるようなイメージをお持ちの方に、私の本音を申し上げておきます。

 

そんなもんウソですよ。

 

アクティブ投資よりもリスクが少ない。

 

そんなもんウソですよ。

 

両建て投資が片張り投資と比較して安全な投資方法であるというのは正直なところ「正解」でもあり「不正解」でもあると思います。

たしかに取引対象の本質は違います、しかしリスクマネジメントの本質は同じだと思います。

 

「α」を追及する両建て投資も「β」を追及する片張り投資も、十分な銘柄分散や資金管理ができていなければ、結局のところ、どちらもリスクは大して変わらないと考えます。

 

これは理論という建て前を取り除いた私の本音です。

ウソだと思ったら実際に投資してみてください、私の言っていることがおわかりいただけるはずです。

 

 

[1] 私の知るかぎり、ロスカットについては女性トレーダーのほうがドライに実行できる傾向があるように思います。その一方、男性トレーダーのほうが未練たらしく、振られてもなかなか諦めきれずに銘柄のストーカーになってしまう傾向があるように思います。

たしかに女性は失恋しても、数日経つと新しい恋人を見つけて、今までの恋人のことはさっさと過去の経験に切り替えてしまう不思議な才能がありますね(笑)

もうずいぶん昔の話ですが、私が業務端末を「AUTO」→「MANUAL」モードに切り替えてロスカットの執行をためらっていたところ、ボスから「ロスカットを執行するか」それとも「荷物をまとめて出て行くか」の二者択一を迫られたことがあります、マジです(笑)。それはもう鬼のような剣幕で迫られました、「ビジネスはあなたの趣味ではない!」と。

ここで、私がマネージャーだった彼を素直に尊敬できたのは、「私が取引で損失を出した」ことではなく、「私が業務を正しく遂行できなかった」ことをしっかりと叱ってくれたからです。その後、ただちにロスカットを執行して素直に自分の過ちを認めました。

 

マーケットは常に正しい」、彼はそのことを私に伝えたかったのかもしれません。

 

ロスカットが事務的にできるかできないか、さらには自分が決めたルールをしっかり守れるか。これが初心者と中級者の1つの分岐点だと思います。難しい技術を習得するよりも、実は簡単なところにコツがあるものですよ。もっとも、今だからエラそうに言えることですけど(笑)

 

[2] 勝率50%を一定期間キープできるトレーダーは正直言ってかなり優秀です。私は実際のところ、もっと勝率は低いですよ。

理由は、これはダメだなと思った銘柄ペアはさっさとロスカットして他の銘柄ペアに組み換えてしまうから負け数は必然的に多くなります(ゆえに勝率は低くなります)。逆に、勝率が高すぎるロジックを検証してみると、ロスカット基準が甘すぎたり、曖昧なためドローダウンがかなり大きい組み方をしている傾向が強いことがわかります。

私は個人的には、負けを素直に認める勝率の低いロジックのほうを好みます(損小利大は投資の基本です、うまく行っているペアで利益を伸ばせばいいんだから)。

もっとも、勝率はあまり気にする必要はありません、投資のプロで勝率を強調している人間がいれば、それはたぶん。。。これ以上は書きません。。。

※サヤ取りのようなスプレッド取引における勝率とは、ペアを1セットとしてロスカットを執行するため、2つの銘柄を同時に決済すると定義しています。

 

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2014年3月 8日 (土)

ロングショートについてのお話 その⑦-6【サヤ取り投資がうまく行かない理由②】

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

以前、【逆張り投資の注意点】というコラムを書きました。

何度もしつこいようですが、繰り返し申し上げます。

 

マーケットは正規分布しません!!」。

 

マーケットが正規分布であるならば、ボリンジャーバンドを逆張り投資で用いるのはもっと有効であるはずです。

これは、私を含めて多くのコントラリアン(逆張り投資家)の方々は非常に耳が痛い話ではないでしょうか?

 

私は統計学や金融工学などの専門家ではありませんし、金融商品を販売する証券マンでもありません。あくまでも、現場で取引をしている一人のトレーダーとして書かせていただきます。

 

 

【サヤ取り投資がうまく行かない理由②】

 

 

1. 前提条件がそもそも間違っているという事実

 

金融工学はマーケットを「正規分布」であると仮定して設計されています。

 

私が株式投資を始めた学生時代、授業もろくに出席せずに、大学の図書館に引きこもって株式投資の書籍や文献を片っ端から読み耽った記憶があります。

以前少しだけ書きましたが、リスクマネジメントの概念も知らずに株式やFXにバイト代を全額突っ込んでハイレバレッジで投資していた頃ですね( ̄▽ ̄)。。。

 

私が投資関連の書籍で最も興味を持った項目が、テクニカル分析の書籍に載っていたボリンジャーバンド(標準偏差)です。

 

書籍には順張りで用いる場合に加えて、

 

「マーケットを正規分布と仮定した場合、σ±2の中に標本データの95.44%以上のデータが含まれていると考えられる」ため「逆張り投資が有効である」

 

といったニュアンスの説明文が書かれていました(もちろん逆張り投資で用いる場合の注意点も書いてありましたよ)。

 

 

Standard_deviation_diagramsvg  

                           

あらかじめ申し上げておきますが、これは、執筆者の方々が間違っていたわけではなくて、前提となる「金融工学そのもの」に根本的な問題があります。

 

この根本的な問題に、理論と現実の矛盾があります。

 

前提としている金融工学が「正規分布であると仮定する」としている以上、テキストの内容は理論的には正しいのですが、現実のマーケットにおいては、必ずしも正しいとは言えません。

なお、この現象を経済物理学の観点から説明すると、「マーケットはベキ分布にしたがう」と説明されています(【逆張り投資の注意点】参照)。

 

 

マーケットは「ベキ分布」にしたがう。

 

その一方で、

 

マーケットは「正規分布」を前提とした金融工学によってマーケット分析をしている。。。

 

う~ん。。。

 

( ̄~ ̄;)。。。

 

この矛盾点は、簡単に解決できる問題ではないことをコラムにも書きましたが(【逆張り投資の注意点】参照)、ここで私が言いたいのは「標準偏差の概念を使わないほうがいい」、ということではなくて「前提条件が異なる概念でマーケットにアプローチをかけている」ことを認識しておく必要があるということです。くれぐれも標準偏差の概念を過信しないように注意しましょう。

 

 

2. 短期間の相関係数を測定して銘柄ペアを選択する

 

「マーケットは正規分布ではない」と書きましたが、エントリー判断を下す前に、取引候補となっている銘柄ペアの短期間の相関係数を測定されることをおススメします。

もっとも、ここに書かなくてもサヤ取り投資を実践されている方はすでに実行されていると思いますが。。。

 

通常は、過去の一定期間のデータを分析する場合、標本数(日足終値)が120本(半年間)、240本(1年間)と多ければ多いほど、データの信頼度は高くなります。

 

その一方で、

 

データ数を増やせば増やすほど、移動平均線が緩やかになり過ぎてしまい、直近のデータの変化を見落としてしまう危険性があります。

 

そこで、逆張り投資の成功率を上げる方法としては、長期間の相関係数の測定に加えて、短期間の相関係数も併せて測定してみることをおススメします。

 

以下の表をご覧ください。

 

Correl_3

 

表の右から3番目は「±0.7」・「9個」となっています。上の段は相関係数、下の段はデータ数です。

 

これは、「過去9日間」の相関係数が「±0.7以上」であれば候補となっている銘柄ペアの間には「何らかの相関関係がある」と考えられる統計上のいちおうの目安です。

おそらく多くの方が過去10日くらいで分析されると思うので、その場合はだいたい±0.68~±0.7以上あれば、現時点での銘柄ペアの連動性は「偶然」とは考えにくいという仮説を立てることができます。

そのため、一時的に乖離している価格差も移動平均に向かって収斂していく可能性が高いと考えらえます。

 

逆にこの数値以下の場合は、長期間の統計データがうまく機能しない可能性が高いので、取引は見合わせたほうがよろしいかと思います。

 

 

3. 「矛盾点」を解決するための妥協策

 

上記に述べた理論と現実が異なるという矛盾点は前提条件が間違っている以上、絶対とは言いませんが、解決することは非常に難しいと考えます。

 

そこで、弱点を補強して実践で使いものになるようにするためには、「他のアイデアと組み合わせて用いるのが現実的な妥協策となり得る」、と考えられます(【逆張り投資の注意点】参照)。

 

「ボリンジャーバンドが±σ2のバンドラインを超えた場合」に加えて、

 

・「過去n日間のサヤの拡大幅が最大値に達した場合」に限りエントリー対象とする。

・「サヤの周期性が一定の条件を満たしていると判断した銘柄ペア」に限りエントリー対象とする。

 

など。

 

詳細は【ロングショート⑤】【システム④】を参照のこと。

 

 

4. テクニカル分析の落とし穴

 

テクニカル分析全般に関して言えることですが、私たちは前もって未来を知ることはできません。あくまでも、辿ってきた過去の記録(事実)を確率・統計的に分析して、未来を予測することしかできません。

ここでは、ボリンジャーバンドを例にあげますが、「テクニカル分析そのもの」の注意点として書いておきます。

おそらく多くの方が勘違いされていると思いますのでぜひ読んでみてください。

 

たしかに、ボリンジャーバンドのチャートを眺めるとσ±2付近でトレンドが方向転換していることがわかります。以前、学生さんたちに取り囲まれて総攻撃を喰らいました、「マーケットは正規分布になっているではないか!」、と(笑)

 

でも、よ~く考えてくださいよ。

 

バンドラインは「後出しじゃんけん」のように、後から被せた結果がチャートに表示されているんですから、σ±2付近で方向転換しているのは当たり前なわけですよ。

だって、σ±2の中にデータの95%くらいがキレイに収まるように被せられているんですからそりゃそうなりますよ(笑)

その証拠に、翌日の終値データが公表されてからボリンジャーバンドを眺めてみてください。どんなに価格差が拡大しようとバンドラインはキレイに被さるように表示されているはずです(いわゆるバンドウォークと呼ばれる現象)。

 

これは非常に大切な話なので、もう一度書きますよ。

 

株価チャートや価格差(サヤ幅)チャートは、

 

ボリンジャーバンドのσ±2付近で方向転換している

 

のではなく、

 

マーケットを正規分布に当てはめて考えているため、ボリンジャーバンドを後から被せて標準偏差σ±2の中に95%のデータが収まるように被せられているにすぎない

 

これが正解です。

 

この違いわかりますか?

今は「マーケットの分布」の話ではなくて、テクニカル分析そのものの話をしています。

 

ボリンジャーバンドの場合、「トレンド相場」ならば「順張りが有効」で、「レンジ相場」ならば、「逆張りが有効」と言われていますが、それは結局のところ、後になって見ないとわかりません。これは間違えやすいのですが、株価が95%「収まる」のではなく、95%「収めている」といったほうが正しい表現だと思います。バンドラインは「後から被せている」のです。この点を理解できていないと逆張りで痛い目を見ることになります。

 

これは、逆張り投資にかぎらず、テクニカル分析そのものの落とし穴です(移動平均も同じです)。

 

当たり前の話ですが、直近の終値のデータまでを使って分析すれば、標準偏差のどのあたりまで価格差が乖離しているのかを調べることはできますが、実際にσ±2を超えた段階で逆張りエントリーしてもうまく行かないことがあるのは、「次の日の終値データがわからない」からです(笑)

 

あくまでも、順張り投資の場合、前日終値までのデータを使って翌日の株価の方向を予測するために「参考として」使うというのが正しい使い方です。

サヤ取りのような逆張り投資で使うのであれば、価格差が拡大に向かうのか、縮小に向かうのかを予測するために「参考として」使うというのが正しい使い方です。

 

参考として」と書いているのは、テクニカル分析を盲信してしまう方々があまりにも多いからです。

 

最後に繰り返し申し上げますが、ボリンジャーバンドの±2σ付近で方向転換しているのは当たり前です、そうではなくて、±2σ付近で方向転換するように作られているのです。

これはボリンジャーバンドにかぎらず、テクニカル分析の落とし穴ですので、読者のみなさんはくれぐれも勘違いしないでくださいね。

 

サヤ取り投資は「相場の予測(β予測)」はしませんが「価格差の予測(α予測)」はします。サヤ取り投資は「予測が一切不要な投資方法」ではありません。

ですから、「予測」をするために、「参考として」使うくらいに留めたほうがよろしいかと思います。

 

 

※ちなみに、私はボリンジャーバンドが大好きです。もう10年近い付き合いになります。

好きだからこそ批判します。何というか、クラスの好きな女の子にちょっかいを出す男子中学生のような感覚でしょうか(笑)

もっと大人の話をすれば、いい感じで弄んでやろうと思っていた女性が、なかなか自分の手のひらで思い通りに転がせずに、逆に自分が振り回されてしまうような魔性の女みたいな存在でしょうか(笑)

何とかしてもっとうまく付き合えないだろうかと日々研究しています。

 

※完全に余談ですが、いつか機会があれば書こうと思っていた内容が1つあったので付け加えておきます。

このブログを読んでいる「順張り投資家」の方は「逆張り投資家」とは考え方が違うという方がいらっしゃるかもしれませんが、「逆張り投資家」は「順張り投資家」でもあると考えます。

 

「順張り投資家」 → トレンドの出ている方向に仕掛ける

「逆張り投資家」 → トレンドとは反対の方向に仕掛ける

 

「トレンドとは反対の方向に仕掛ける」ということは、「トレンド転換の初動に乗ることを期待する」ことと同義だと思います。その意味で、私は「順張り投資家」だと思います。これは屁理屈でしょうかw

 

 

5. エセ科学にご注意!

 

最後に、テクニカル分析は科学的投資法であるかどうかという私の考え方を示しておきます。

結論を言えば、テクニカル分析は、過去の事実から類推する「観察科学」の1つとなる「可能性がある」と考えます。ただし、実践で役に立たなければエセ科学です。

ここで言うエセ科学とは、再現性のない手法であったり、標本データが十分でないため偶然の発生確率を排除し切れていないような手法のことです。

 

まず、投資にかぎらず、物事を科学的に考えるのであれば、その根底には必ず何らかの哲学が存在するはずです。

 

私の哲学は、①「自分で仮説Aを立てる」→②「自分で立てた仮説Aを対立仮説Bによって徹底的に論破する」→③「論破された仮説Aを補強してさらに対立仮説Bを論破する」→④「論破された対立仮説Bを補強してさらに仮説Aを論破する」といった思考プロセスによって論理を補強して、最終的に「論理的な矛盾が解決した場合」、あるいは「矛盾を他の論理と組み合わせることによって妥協できると判断した場合」にかぎって自己責任で物事を判断するようにしています。

 

① 仮説A ⇔ 対立仮説B

 

ABの根拠を明確にする

 

② 対立仮説Bの根拠 ⇒ 仮説Aを論破

 

Aの根拠を補強する

 

③ 仮説Aの根拠 ⇒ 対立仮説Bを論破

 

Bの根拠を補強する

 

④ 対立仮説B ⇒ 仮説Aを論破

 

このような思考作業を繰り返し、BAに反論できなくなった時点でAの考え方を採用するようにしています。また、この一連の思考プロセスに矛盾がないかどうか、矛盾があった場合は解決策があるか、解決策がなければ他の論理と組み合わせて妥協できる方法はないか。可能なかぎり周りの友人・知人たちにアドバイスしてもらいます。そして、周りの友人・知人たちにも議論を吹っ掛けます(笑)

 

こういったプロセスを経て、「自分の思考のズレ」を軌道修正したり、人間の最大の弱点でもある「感情的な行動」をコントロールするようにしています。また、このプロセスから新たなアイデアが生まれることもあります。そして、そのアイデアも当然、徹底的に批判することになります。

 

私は教科書に書いてある内容が100%正しいとは思いませんし、自分の考え方が100%正しいとも思っていません。だからこそ、常識と言われていることでも徹底的に批判しますし、自分の考え方も批判します。そして批判した内容をもう一人の自分に別の考え方をさせて頭の中で議論させて、様々な角度から矛盾点を解消し、思考を整理するように工夫しています。

そして、すべて「自己責任」において最終的な判断を下します。

 

私は、学生時代に哲学の授業で学んだカール・ポパー氏の反証主義という考え方に非常に感銘を受けました(私はここから物事を批判的に考えるという視点を学んだのだと思う)。

反証主義とは、「①観察」→「②仮説」→「③予測」→「④検証」→「⑤結論」の5つのステップによって成り立つ分析手法です(仮説演繹法)。

 

私の職業はヘッジ取引のトレーダーですが、日々の業務の中で100%の確信を持って「銘柄選択」や「トレードエントリー」をすることはまずありません。このモヤモヤ感が解消できる日が来れば、この仕事は引退してのんびり暮らしたいのですが、おそらく一生引退することができないでしょうね。。。

私は自分が生活する手段として職業を選びましたが、すでに手段が目的化されつつあります(笑)

 

 

結論を言えば、テクニカル分析は、過去の事実から類推する「観察科学」の1つとなりうる「可能性がある」と考えます。

 

しかし、仮説演繹法を例にあげて私の思考プロセスを批判するならば、

 

①観察」→「②仮説」の段階で、「ベキ分布」にしたがうとされているマーケットに対して、「正規分布」であると仮定した考え方でアプローチをかけているという矛盾が完全に解消できていないという事実です。

 

その結果、「③予測」→「④検証」→「⑤結論」の段階で、「②仮説」の前提条件が異なっているという矛盾を認識しつつ行うわけですから、「⑤結論」によって試行した結果、理論通りに行かない可能性が高いことを常に意識しながら仕事をしているわけです。

 

私が上げたパフォーマンスを「⑤結論」が正しかったかどうか再度「④検証」するには、「勝率」「利益率」「利回り」そして「私のベースサラリー+ボーナス」などの数字が全てを物語ります。

 

正しいと思う判断を下してトレードしても、なかなか思い通りに結果を出せない期間がありました。「確率論から考えて試行回数を増やせば大数の法則により、期待している結果に近づくのではないか?」と「⑤結論」を出して、トレードしてもやはりうまく行かないこともありました。

 

うまく行かない経験を積み重ねたからこそ、矛盾点を解消する方法として「他のアイデアと組み合わせて用いるのが現実的な妥協策となり得る」という1つの「⑤結論」に至り、数字が改善されるようになりました。

 

 

長くなりましたが、私も頭の中をテクニカル分析と同じように動かしています。

もはや職業病かもしれません(笑)

 

ただし、確率・統計を根底として成り立っているテクニカル分析も決して万能ではありません。トレードの試行作業を繰り返すうちに、「きちんとした理論的裏付けを行ってもうまく行かないことがある」という実体験から私自身、多くのことを学び、そして反省しました。

 

今日に至るまで、理論を完全にマスターした、いわゆる優等生たちが、現場に出てパフォーマンスを出せずに最前線から離脱していく光景をずっと見てきました。

 

おそらく、「理論をマーケットに当てはめて考える」よりも、実際にトレードをして、「マーケットから理論を考える」ほうがよほど重要だと思います。

 

私の言いたかったことはこれが全てです。

 

・「理論をマーケットに当てはめて考える」

・「マーケットから理論を考える」

 

両者は似て非なるものです、あくまでも私の考え方は、

前者が「エセ科学」、後者が「科学」だと思っています。

 

テクニカル分析は「エセ科学」!?

↑問題発言かもしれません。

 

テクニカル分析は、過去の事実から類推する「観察科学」の1つとなる「可能性がある」と考えます。

でも私に言わせれば、「観察科学」も実践で使い物にならなければ、どんな立派な理論もしょせんは絵に描いた餅にすぎません。その意味では、テクニカル分析は100%の科学的投資法ではないと考えます。

 

 

私は常識に逆らいます、

いわゆる投資専門家のいう事も聞きません。

アナリストレポートもろくに読んだことがありません。

投資情報などの有料サービスも受けたことがありません。

 

でも唯一、マーケットの言うことだけは素直に聞きます。

 

そして、自分の犯した過ちを素直に認め、今後の改善に努めます。

トレーダーはそれでいいと思います。

 

マーケットは常に正しい

 

結局そういうことですね。

 

 

※そういえば、自分よりもパフォーマンスを上げている方の言う事も聞きます。どんなにがんばっても上には上がいますね。

 

※今の日本に欠けているのは投資に関するホンモノの専門家が少ないことだと思います(自称専門家は腐るほどいるw)。私はお金とってセミナーやるような身分ではないけど、ある程度結果を出したトレーダーは次の世代にオープンセミナーをやったりして教育して行けば、日本人の金融リテラシー(識字率)が向上するのではないかなと思います。先日、シノビーさんのブログを読んでいてなるほど!と思ったものですからw(参考【貧乏な「専門家は、相談たいない】)。

 

 

コラム・その他】←ひまつぶしに読んでね♪

 

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2014年3月 2日 (日)

ロングショートについてのお話 その⑦-5【サヤ取り投資がうまく行かない理由①】

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

サヤ取りの理論をしっかり学んだ勤勉な投資家の方でも、「実際に投資してみると何だか期待していたほどうまく行かないよ」というお話をよく伺います。

「理論」と「実践」の乖離。ではそもそも、どうしてこのような問題が起こるのでしょうか?

 

結論を言うと、『前提となる「理論」と「考え方」そのものが間違っているから』と考えられます。

 

裁定取引(アービトラージ)    → 【一物一価】

異銘柄間の価格差取引(ストラドル)→ 【ニ物二価】

 

両者の違いをしっかり理解できていないと、思わぬ落とし穴にハマってしまいますので気を付けてくださいね。

 

本来、このテーマはブログの最初の段階で書いておくべき内容だったと思うのですが、以下に述べる項目は非常に大切な概念だと思いますし、最後にどうしても読者のみなさんに伝えておきたい内容ですので、このブログの入門編をひとまず締めくくるに当たって、2回に分けて説明します(この内容は相場技術の話ではなくて理論寄りの内容になります)。

サヤ取り投資が「両建取引のため、マーケットの変動によるβリスクを受けにくい投資方法である」ことはたしかですが、読者のみなさんが安易に取引を実践した結果、大やけどを負わないことを切に願います。

 

 

【サヤ取り投資がうまく行かない理由①】

 

 

1.前提条件が似て非なるもの

 

サヤ取りを行う多くの投資家の方は、サヤ取り投資が裁定取引であると誤解しているケースが非常に多く見受けられます。

厳密に言えば、「サヤ取り投資は裁定取引ではありません!」。

両者は似て非なるもの、そもそも取引の前提条件は全く異なるものです(もっとも「裁定取引」という言い方のほうがわかりやすいので、私も混同して使うことがありますが、両者の違いはしっかり理解しておいてくださいね!)。

 

 

1-1. 裁定取引(アービトラージ)→ 【一物一価】

 

経済学における概念で、「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」という理論が成り立つという経験則があります。

これを、「一物一価の法則」と言います。

ところが、上記のような同一の性質を持つ2つの商品の間であっても、需要と供給の不一致などにより価格が乖離することがあります(一物二価の状態)[1]

このような場合、割安な商品を買い建て、割高な商品を売り建てることによって、理論上リスクなしに収益を確定させることができます。

つまり、「①一物一価の商品」であっても、「②価格が乖離」した場合、「③理論価格に近づき、価格差が収斂」していくことによって、「④割高・割安な状態が解消」された場合に、「⑤反対売買を行なうことによって理論上リスクなしに収益化する」ことができると理論です。なお、「⑥同一商品同士の両建て取引となるため、マーケットの変動によるβリスクを完全に排除できる」という特徴があります。

上記①~⑥が「裁定取引(アービトラージ)」のメカニズムです。

 

 

1-2. 異銘柄間の価格差取引(ストラドル)→ 【ニ物二価】

 

2つの異なる確率変数の間の相関関係(連動性)を示す統計学的手法に「相関分析」があります(【相関分析と相関係数】参照)。

上記の1-1.で述べた「裁定取引(アービトラージ)」は相関係数が理論上は1.0の値となります(-1.0になる取引もありますが、私はやったことがありません)。

これに対して、このブログで説明しているサヤ取り投資、すなわち「異銘柄間の価格差取引(ストラドル)」は相関係数が1.0にはなりません。そのため、相関係数が「0~+0.99…」(正確に言えば「-0.99…~+0.99…」)の範囲内にある銘柄ペアを同時に両建して取引することになります。

言い換えれば、一物一価の価格差を取引対象とする「裁定取引(アービトラージ)」に対して、「異銘柄間の価格差取引(ストラドル)」はニ物二価の価格差を収益源とする取引形態となります(ストラドルについては【ロングショートとレラティブバリュー[1]補足部分を参照のこと)。

多くの方々が認識しているサヤ取り投資(ストラドル)は、裁定取引(アービトラージ)とマーケットニュートラルの考え方は一緒ですが、決定的に異なる点は、「異なる商品同士の組み合わせのため、価格差が必ず収斂するわけではない」ということです。

あくまでも「相関の高さ」を担保とした確率論の取引にすぎないため、価格差が収斂するという保証はどこにもありません(【サヤ取りブログ~ロングショートを用いたヘッジ取引~1.2.参照)。

つまり、「①ニ物二価」の異なる商品であっても、「②高い相関関係(強い連動性)」を担保とすることにより、「③過去一定期間の平均乖離幅からさらに乖離」した場合、確率・統計上は「④過去一定期間の平均乖離幅に近づき、価格差が収斂」していくことを期待することができるため、「④反対売買を行なうことによって比較的リスクなしに収益化する」ことができるという理論です。なお、「⑤両建て取引によりマーケットの変動リスク(βリスク)を受けにくい」という特徴があります。

上記①~⑤が「異銘柄間の価格差取引(ストラドル)」のメカニズムです。

 

 

1-3.  裁定取引(アービトラージ)と異銘柄間の価格差取引(ストラドル)の違い

 

復習を兼ねて、両者の違いをまとめておきます。

 

・裁定取引(アービトラージ)

 

「①一物一価の商品」であっても、「②価格が乖離」した場合、「③理論価格に近づき、価格差が収斂」していくことによって、「④割高・割安な状態が解消」された場合に、「⑤反対売買を行なうことによって理論上リスクなしに収益化する」ことができる。なお、「⑥同一商品同士の両建て取引となるため、マーケットの変動によるβリスクを完全に排除できる」という特徴がある。

 

・異銘柄間の価格差取引(ストラドル)

 

①ニ物二価」の異なる商品であっても、「②高い相関関係(強い連動性)」を担保とすることにより、「③過去一定期間の平均乖離幅からさらに乖離」した場合、確率・統計上は「④過去一定期間の平均乖離幅に近づき、価格差が収斂」していくことを期待することができるため、「④反対売買を行なうことによって比較的リスクなしに収益化する」ことができる。なお、「⑤両建て取引によりマーケットの変動リスク(βリスク)を受けにくい」という特徴がある。

 

 

2. サヤ取り投資の注意点

 

サヤ取り投資は、個人投資家が実行しやすい裁定取引の1つと考えられているため、比較的参入が容易なことはたしかです。

ただし、βリスクを完全に排除できるのは「裁定取引(アービトラージ)」であって、「サヤ取り(ストラドル)」では、βリスクを完全に排除することはできません(【相関係数の弱点とβ値の重要性】参照)。

 

わかりやすい例として【銀行業】を使って説明します。

三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)とみずほフィナンシャルグループ(8411)はどちらも日本を代表する銀行業ですが、あくまでも別会社です。もっとも、両者は【同一国籍】の【同業種】ですから、値動きは非常に似ています。

 

 

Mufg  

三菱UFJフィナンシャルグループ(8306

 

Mfg

みずほフィナンシャルグループ(8411

 

Mufg_mfg

】三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)【】みずほフィナンシャルグループ(8411

 

1番目のチャートは三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)の過去6か月間のチャート、2番目のチャートはみずほフィナンシャルグループ(8411)の過去6か月間のチャートです。値動きが非常に似ていることがわかります。株価の比率は三菱3:みずほ1くらいでしょうか。

3番目のチャートは、6か月前の2013/8/28の株価指数を100とした指数チャートです。相関が高い銘柄ペアですから同じような値動きをしていることがこのチャートからもわかりますね。

ただし、ここで注意していただきたいのがβ値です。上の株価指数チャートではBeta0.816となっています。完全にマーケットニュートラルの状態はBeta1.0の組み合わせとなりますから、市場変動リスクはほとんど受けない状態であることがわかります(裁定取引ではβ値は理論上は1.0になります。ですから、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)を同時に両建てすればβ値は1.0になりますね、手数料だけ取られてマイナス収支確定ですがw)。

 

この例では、βリスクが比較的低いチャートを使いましたが、β値があまりにもかけ離れすぎていると、β値が大きい銘柄の片張り投資とあまり変わらなくなってしまうため注意が必要です。理想としては、「①相関係数が高く」、「②βリスクを受けにくく」、「③適度にくっついたり離れたりしてくれる」銘柄ペアがあればいいのですが、そんな都合のいい組み合わせはまずありません(笑)

 

これは最後のブログに書く予定ですが、結局のところ、11の銘柄ペアのサヤ取り投資はなかなかうまく行きません。というよりも、うまく行くときはかなりの利益となって、うまく行かないときはかなりの損失となるため損益曲線がかなり荒くなってしまい安定したトレードは難しいと思います。つまり、確率・統計上、偶然の発生確率を抑えるためには、トレード試行回数は同じ条件の下で最低限30回以上繰り返さなければトレードモデルは評価できないというのが私の考えですが、よほどの「①銘柄選定能力」と「②完璧なエントリータイミング能力」をお持ちでなければ、おそらく30回の試行作業をする前に資金が無くなってしまうような気がします。

そのため、分散できる資金力がないと、ポートフォリオの質が担保できないため、運用目的での投資というよりも投機行為に近くなってしまうように思います(ポートフォリオの重要性については【RPGを使ってポートフォリオの重要性を考えてみる】参照)。

よって、銘柄ペアを複数に分散することにより、少しでもβ値を1.0に近づけて行くような投資方法が、結局のところ妥協できる投資戦略になりうると考えられます。

ですから、11の銘柄ペアよりも、2233551010と、できるかぎりポートフォリオを増やして取引されることをおススメします。

 

また、このような観点から見ると、「レバレッジをかけてサヤ取り投資を行うことは極めて危険な行為である」ともいえます。

 

まさか。。。

 

サヤ取り投資をフルレバレッジをかけてやろうとする投資家の方はいないと思いますが、もしそういった考え方の方がいらっしゃれば、否定はしませんが、決してオススメはしません。私のブログは投機的な内容ではなくて、保守的に運用していくための内容ですので、今まで読んでくださった読者の方の中にはいないとは思いますが。。。

 

サヤ取り投資はレバレッジをかけて行う運用ではありません。サヤ取り投資は、余剰金が3,000万円ある投資家の方であれば、投資可能金額全体から見て、投下資金量は多くても1,2001,500万円くらいが妥当だと思います(50%程度、できれば40%程度)。キャッシュ比率を最低でも50%くらいは確保しておかないと(このブログで説明するかどうかはわかりませんが)中級レベル~上級レベルで説明する応用が効かなくなります。

資金量が少ないうちに私のブログで書いた方法で運用すると、又裂き現象に遭遇した場合に、ロスカットでしか防御ができなくなります。

たとえば少しテクニック的な話になりますが、ドルコスト平均法で損益曲線をなだらかにするには、分割して仕掛けを行う必要があります。そのため、資金量に余裕がないと取得価額がコントロールできず、逆張り投資の弱点を補強することができなくなります。これは、増し玉やナンピンと言った、非常に実践的な話になるので今は書きません。

 

 

3. まとめ

 

この記事の冒頭では、サヤ取り投資がうまく行かない理由として、『前提となる「理論」と「考え方」そのものが間違っているから』であると書きました。

 

裁定取引(アービトラージ)    → 【一物一価】

異銘柄間の価格差取引(ストラドル)→ 【ニ物二価】

 

前提となる「理論」とは上記の裁定取引(アービトラージ)との前提がそもそも違う点を認識できていないため、「価格差が高確率で収斂することを期待して資金の全額あるいはハイレバレッジで投資したものの、又裂きに遭ってしまい、証拠金が維持できずにロスカットせざるを得ない」ケースが多いようです。

また、前提となる「考え方」とは、「十分に銘柄を分散せずに、11の銘柄ペアにかなりの比率で投資した結果、個別銘柄の変動リスクに対処しきれず、ポートフォリオ全体が巨額の損失になってしまった」ケースが多いようです。

これは、何も個人投資家に限った話ではなくて、ロングショート戦略を多用するヘッジファンドについても同様のことが言えます。

サヤ取り投資はヘッジファンドが行っているから信頼できる投資方法である」。

この解釈は「正解」であると同時に「不正解」でもあります。

ヘッジファンドと聞くと、何だかボロ儲けしているイメージがありますが、実際にはその多くが数年以内に廃業に追い込まれているという事実があることをご存じでしょうか?

破綻の原因としては、高いレバレッジをかけすぎて又裂き現象に耐えきれず、莫大な含み損を出してしまったケースが多いと聞きます。裁定取引(アービトラージ)では35倍くらいのレバレッジをかけているヘッジファンドもあるようですが、ロングショートでレバレッジをかけて運用を行っているヘッジファンドは破綻する傾向が多いように見受けられます。

サヤ取り投資はシンプルな投資方法であるがゆえに、アマチュアもプロも大差はありません。

結局のところ、資金管理が十分にできていなければ、「片張り投資」も「両建て投資」もリスクはあまり変わらないと思いますよ。

金融取引で継続的に利益を上げ続けることは決して簡単なことではありません、安易に取引して大やけどを負わないようくれぐれも注意してくださいね!

 

次のサヤ取り投資がうまく行かない理由②では、以前書いた【逆張り投資の注意点】を補足することにします。

 

 

[1] 裁定取引(アービトラージ)の例として以下の2点を説明しておきます。

 

①「株価指数」と「ETF(連動型上場投資信託)」の乖離

②「先物価格」と「先物価格+オプション価格」の乖離

 

①「株価指数」と「ETF(連動型上場投資信託)」の乖離について

 

TOPIXや日経225などの株価指数の取引において、「株価指数」と「ETF(連動型上場投資信託)」との価格差が一定水準以上に乖離することがあります。両者の間で乖離が起こる理由は、「トラッキングエラー(Tracking Error)」によって値動きにズレが生じてしまうことが原因です。トラッキングエラーとは、簡単に言えば、株価指数と同様な値動きをするように作ったバスケット(ポートフォリオ)がヒストリカルデータを元に設計されているために、実際の株価指数との間に値動きのズレが生じてしまう現象です(参考【トラッキングエラー】)。

このような場合、価格差の収斂を期待して、先物市場と現物市場の間で割高な商品を売り建て、割安な商品を買い付けることにより、割高・割安な状態が解消された場合に、反対売買を行って決済すれば、理論上リスクなしに収益化することができます(実際には株価指数には先物を使う)。

 

先物」が割高で、「ETF」が割安の場合、

 

先物売り+ETF買い

 

の執行を同時に行うことにより、両者の価格差が期待利益となります。

反対に、

 

先物」が割安で、「ETF」が割高の場合、

 

先物買い+ETF売り

 

の執行を同時に行うことにより、両者の価格差が期待利益となります。

 

なお、現物価格となる株価指数(INDEX指数)は、個人投資家がバスケット注文で発注しようとすると莫大な資金が必要となりますので、上記のような「TOPIX連動型上場投資信託(銘柄コード:1306)」、「日経225連動型上場投資信託(銘柄コード:1321)」などのETFを活用すれば、比較的やりやすい方法かと思います。

 

※なお、私の使っている業務端末でも、相関係数1.0で抽出するとETF同士の任意組み合わせも多数表示されました(パラメータを四捨五入しているため)。期待利益は50円程度で少ないようですが、「①終日終値で価格差が乖離した翌日に、寄り付き指値注文で執行がうまく通り」、「②終日終値で価格差が収斂した翌日に、寄り付き指値注文で反対決済がうまく通れば」、確実に利益になりますね。

ただし、手数料を差し引くとたいして儲かりませんが¬_¬。。。

 

②「先物価格」と「先物価格+オプション価格」の乖離について

 

TOPIX先物や日経225先物などの先物市場において、「先物価格」と「合成先物価格(オプション価格」との価格差が一定水準以上に乖離することがあります。

代表的な取引手法としては、先物とオプションを組み合わせた「コンバージョン戦略」「リバーサル戦略」があります(詳しくはマネックスラウンジ【裁定取引(コンバージョンとリバーサル)】参照)。

コンバージョン戦略は、「(合成先物価格)-(先物価格)」のスプレッドを取りに行くトレード手法のことを言います。

 

合成先物価格」が割高で、「先物価格」が割安の場合、

 

先物買い+(コール買い+プット売り)」

 

の執行を同時に行うことにより、両者の価格差が期待利益となります。

 

リバーサル戦略は、「(先物価格)-(合成先物価格)」のスプレッドを取りに行くトレード手法のことを言います。

反対に、

 

先物価格」が割高で「合成先物価格」が割安の場合、

 

先物売り+(プット買い+コール売り)

 

の執行を同時に行うことにより、両者の価格差が期待利益となります。

 

上記のようなケースの場合、拡大した価格差(サヤ幅)のポジションは、当該限月のSQ(清算日)まで持ち続ければ「必ず」収斂します(もちろん途中で決済してもOKです)。

 

上記2点が価格裁定(アービトラージ)のイメージです。統計学的に表現すれば、相関係数は1.0となり、β値は1.0となるため市場変動によるβリスクを完全に排除でき、αのみを追求する裁定行為が可能となります。

 

この取引は「100%確実に成功します」、

 

「①価格が乖離した段階で注文を執行させる」ことができ、

「②どれだけ価格差が乖離しても証拠金不足に陥らないくらいの資金」が用意できるならば。。。

 

 

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