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2014年2月25日 (火)

ロングショートについてのお話 その⑦-3【ロングショート型とレラティブバリュー型】

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

世間一般にサヤ取り(ペアトレード)と呼ばれる投資方法には、大きく2つに分類して、「①ロングショート型」[1]と「②レラティブバリュー型」の戦略パターンがあります。【システム②】でも補足しましたが、私のブログはどちらかというと【レラティブバリュー型】の説明になりつつあります(【ロングショート③】ステップ2の部分)。

これでは、私のブログタイトルと内容が乖離してしまいますね( ̄▽ ̄;)。。。

そこで、軌道修正を兼ねて、両者の違いを補足説明しておきます。

 

 

【ロングショート型とレラティブバリュー型】

 

 

結論を先に書きますが、「①ロングショート型」は「ボラティリティの高い急激な上昇相場と、大暴落には対応しきれない」といった弱点があり、「②レラティブバリュー型」は①の弱点を補完できるものの「ボラティリティの低いレンジ相場では戦略がうまく機能しにくい」といった弱点があります(これは理論もそうですが私の経験上のお話です。「弱点」という言い方は正しくないかもしれませんが、そういった「傾向」があるということね)。

そのため、「2つの戦略を組み合わせると、より安定した収益システムの基盤ができる」というお話です。

①と②はどちらも、相対概念を用いて割高・割安の基準を決定しますが、①は比較対象が「ペアとなる銘柄」であるのに対し、②は比較対象が「ベンチマーク」となります。

 

 

①【ロングショート型】

 

ロングショート③】ステップ2の部分のスクリーニング式は、「ロングショート型」というよりも、「レラティブバリュー型」の条件式となりますね。。。

ベンチマークを基準として、相対的に割安な銘柄をロング、相対的に割高な銘柄をショートする」。

これに対して、「ロングショート型」は、「ベンチマークとの相対概念は基本的には無視して考え、対象となる銘柄ペアの価格差のみに注目する」という極めてシンプルな戦略といえます(おそらく世間一般に言われている「サヤ取り」の説明はこちらが多いと思います)。

 

この場合、【ロングショート③】ステップ2の部分のスクリーニング式は、以下のようになります。

 

 

-1 信用倍率

 

レラティブバリューでは、信用倍率の方程式を、

 

∟ 「 x z {(ベンチマーク)信用買い残高 ÷ (ベンチマーク)信用売り残高 } ≦ y 」(x:ロング候補・y:ショート候補・z:基準値)[1]

 

のように記述しましたが、ロングショートでは、

 

∟ 「 x < z {(信用買い残高 ÷ 信用売り残高)} ≦ y

 

のように記述し、これを変換すると

 

∟ 「 x < z { 信用倍率 } ≦ y

 

となります。

 

zは「3」、すなわち信用倍率が3倍未満の銘柄をロング、3倍以上の銘柄をショートするのがひとつの目安となっているようです(私もひとつの目安としていますが、すいません、断定した表現はできません)。

 

[1] レラティブバリューの補足になるが、以下の式を併用すると、極端な倍率の排除が可能となる

∟ 「 x < z { ベンチマーク信用倍率 ±n%の範囲内 } ≦ y 」(x:任意の変数・y:任意の変数)

 

 

-2 EPS(1株当たり利益)

 

ロングショート③】ステップ2では、PERを用いて記述しましたが、EPS1株あたり利益)をスクリーニング項目の説明からこっそり外したところ、知人の方々から「何で外したの?」と突っ込まれました。みなさんなかなか突っ込みのレベルが高いようですね(笑)

ステップ2の説明がレラティブバリュー寄りになってしまったのでPERで代用しました。はい、すいません。

 

ロングショートのEPSの式を記述しておきます。

 

EPSの算出式は、

 

∟ 「 x < z {(当期利益÷期末の発行済み株式)} ≦ y

 

 

∟ 「 x < z { EPS } ≦ y

 

となり、ステップ2からステップ3のスクリーニング項目に移動することになります(【ロングショート③】ステップ2とステップ3はスクリーニングの概念が違いますよ)。

 

EPSは株数の異なる他社のEPSではなく自社の前年度のEPSと比較します。

理由は、利益が1000億円の企業と利益が1億円の企業では、比較することができないためです。利益が1000億円の企業で株数が10億株なら、EPS1000億円÷10億株=100/1株となります。これに対して利益が1億円の企業でも株数が1万株であればEPS1億円÷10,000株=10,000/1株となります。このように他社のEPSとの比較ができないためです。

 

 

以上、2点ほど補足説明をしましたが、上記の計算式のようにベンチマークは無視して考えることが多いようです。

全部の項目を書くときりがないので、使い方としては以上のようなイメージとなります(マニュアル等や書籍等、オフィシャルの出版物等を作成する機会があれば詳しく書きます)。

 

さて、マーケットニュートラルの考え方は、「いかなる相場状況であっても、ヘッジ効果を発揮する全天候型のシステム」と思われがちですが、「急激な上昇相場と、大暴落には対応しきれない」という弱点も十分に考慮する必要があると考えます(理由は②【レラティブバリュー型】を参照)。もっとも、ポジションの組み方によっては、大きな利益にもなるのですけれども。。。

 

 

②【レラティブバリュー型】

 

 

次に、レラティブバリュー型の説明をします。レラティブバリュー(Relative Value)は日本語にすると「相対価値」という意味です。「相対」という言葉の意味を考えていただければわかると思うのですが、「相対」の概念は、必ず「他の対象物」と比較することになります。ここでいう「他の対象物」とはベンチマークのことです。

ロングショート③】ステップ2を再度参照していただきたいのですが、すべてのスクリーニングの条件式は必ずベンチマークに相対的に「割安」の位置にあるのか、「割高」の位置にあるのかをグループ分けしていることがわかると思います。この場合、「割安」の位置にある銘柄が「ロング候補」となり、「割高」の位置にある銘柄が「ショート候補」となり、ベンチマークを挟んで対峙させていることがおわかりいただけると思います。

 

ステップ2の作業をする理由は、

 

上昇相場では、「割安銘柄」が「割高銘柄」に比べてボラティリティが高くなる

下落相場では、「割高銘柄」が「割安銘柄」に比べてボラティリティが高くなる

 

傾向にあると考えられるためです。ロングショートは、相対価値の比較対象が「ベンチマーク」ではなく「ペアとなる銘柄」のため、突然の相場変動にはうまく対応しきれない傾向があるように思います(あくまでも私の実体験での話です)。

 

そのため、「レラティブバリュー戦略」を「ロングショート戦略」と併用することにより、両者を1つの合成ポートフォリオとして考えた場合、「レラティブバリュー戦略」は「ロングショート戦略」の「ボラティリティの高い急激な上昇相場と、大暴落には対応しきれない」という弱点をカバーできると考えられます。

ただし、レラティブバリューは相場変動には対応できるものの、逆に「ボラティリティの低いレンジ相場では戦略がうまく機能しにくい」という弱点があります。

このケースも上記と同様、「ロングショート戦略」と併用することにより、「レラティブバリュー戦略」の上記の弱点をカバーできると考えられます。

 

以上のように、2つの戦略には、それぞれの戦略の持つ「強み」と「弱み」があります。この2つの戦略を合成することによりお互いの弱点を補完することができると考えられます。いわばブレンドコーヒーのように最適な味付けになるようにうまくブレンドすることできれば、サヤ取り投資(「ロングショート戦略」+「レラティブバリュー戦略」)は、

 

いかなる相場状況であっても、ヘッジ効果を発揮する全天候型の運用システム

 

となりうる、と考えられます。

 

なお、資金量が十分にない投資家の方は、少し応用を効かせて、以下のようなポジション比率の調整も有効かと思います。

 

たとえば、「明らかな上昇相場の基調であれば、ショートポジションの比率をロングポジションの1に対して0.8程度に設定する」というポジション比率にしたらどうなるのか、という仮説を立てます。現在の「相場環境」は上昇基調、だけど「万が一の暴落」が怖い

このような場合、万が一の暴落の際は、「「割高銘柄」が「割安銘柄」に比べてボラティリティが高くなる」と考えられるため、現在の「相場環境」に合わせつつ、「万が一の暴落」のときに「レラティブバリュー」のメリットが「ロングショート」のデメリットを補完して、ヘッジの役割を果たすようなポートフォリオの設計が有効と考えられます。

 

逆に、「明らかな下落相場の基調であれば、ロングポジションの比率をショートの1に対して0.8に設定する」というポジション比率にしたらどうなるのか、という仮説を立てます。

現在の「相場環境」は下落基調、だけど「上昇相場への突然の転換」が怖い

このような場合、上昇相場への突然の転換の際は、「「割安銘柄」が「割高銘柄」に比べてボラティリティが高くなる」と考えられるため、現在の「相場環境」に合わせつつ、「上昇相場への突然の転換」のときに「レラティブバリュー」のメリットが「ロングショート」のデメリットを補完して、ヘッジの役割を果たすようなポートフォリオの設計が有効と考えられます。

 

上記はひとつのモデルケースですが、ご自身でもアイデアを考えてみてください。

私の業務上、具体的な数値や、配分比率等はこれ以上控えさせていただきますが、考え方としては以上のようなイメージとなります。

私のようなヘッジトレーダーの投資方法に批判があることは十分承知していますが(むしろ批判してくださると嬉しいです)、このような保守的な考え方が少しでも参考になれば幸いです。

(コラム【RPGを使ってポートフォリオの本質を考えてみる】を参考にみなさんもヘッジ取引の本質を考えてみてください。「異なる属性同士の弱点を相互に補完する」という考え方の本質をわかりやすく書いてみました。ゲーマーの方はぜひぜひ!)

 

 

この記事の本質は、

 

「ロングショート戦略」→「レラティブバリュー戦略」の弱点の補完

「レラティブバリュー戦略」→「ロングショート戦略」の弱点の補完

 

『「ロングショート+レラティブバリュー」を1つのポートフォリオとして考え、お互いの属性を相互に補完する』

 

以上のような相互補完の「考え方」が大事というお話でした。

 

次は、今まで書いたブログ内容と上記の説明をすべて組み合わせて【クロスボーダー裁定行為について】考えてみたいと思います(補足事項からは脱線しますよ)。

[1] 当ブログで定義している「ロングショート」は、異銘柄間の価格差取引(ストラドル・ペアトレード)のニュアンスを含んでいます。

極めて厳密に定義すれば、「ロングショート」は企業調査等を事前に行い、割安・割高を判断し、ロングとショートを分類しているファンドもあるようです(具体的なファンド名の掲載は控えさせていただく)。私の所属しているファームでは、単純にテクニカル分析を90%くらい使ってファンダメンタルはあまり重視していません。

なお、ロングショートは、実際の運用上はロング比率がショート比率よりも多い傾向があり、下落相場ではロングポジションを完全にカバードヘッジできていないヘッジファンドが多く見受けられます。

 

サヤ取り投資は、以下のように分類できます(私の説明は一般的な書籍の内容とは少し異なります。ロングショートの割高・割安判定→他方の銘柄、レラティブバリューの割高・割安判定→株価指数などのベンチマーク、を基準として説明しています)。

 

ストラドル

異銘柄間の価格差を対象とした取引。

基本的に、ロング銘柄1に対し、ショート銘柄1でポジションを構築するため、ペアトレードとも呼ばれる(【ブログタイトル変更】参照)。これにより一方のポジションが他方のポジションに対して絶対的なヘッジ(保険)の役割を果たし、マーケットの変動リスク(βリスク)を低減する効果が期待できる(【ロングショート】参照)。なお、2銘柄を必ずセットで売買するため、最小単位のポートフォリオ投資であるといえる。

 

ロングショート

ストラドルを銘柄ペアを分散することにより、等金額の銘柄ペアを複数セットにしてポジションを構築する。これにより、個別銘柄の突発的なニュースなどによる変動リスクを、ポートフォリオ全体でカバーするようにポジション設計を行う。当ブログでのロングショートはこのパターンに該当する。

なお、ロングショート戦略を採用するヘッジファンドでは、企業の個別訪問をしたり、EPSPERなどファンダメンタルを重視して銘柄選定を行うファンドも存在する(具体的なファンド名の掲載は控えさせていただく)。なお、ベンチマークは基本的に無視して考えることが多い。ロングショート戦略は一方のポジションが他方のポジションに対して絶対的なヘッジ(保険)の役割を果たすことになる。

 

レラティブバリュー

ストラドルを、銘柄ペアを分散することにより、等金額の銘柄ペアを複数セットにしてポジションを構築する。『上昇相場では、「割安銘柄」が「割高銘柄」に比べてボラティリティが高くなり、下落相場では、「割高銘柄」が「割安銘柄」に比べてボラティリティが高くなる』と考えられるため、マーケット変動によるβリスクをロングショートに比べて排除できる可能性が高い。なお、株価指数などのインデックス指数をベンチマークとして、割高・割安判定を行う。


上記のような取引を総称して"Stat-Arb(Statistical Arbitrage)"と呼ばれる。 翻訳すると「統計的裁定取引」、つまり完全無リスクな本来の裁定取引とは区別して表現される。

厳密に定義するとややこしい。。。

 

 

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