【システムについてのお話 その③】
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この記事の位置付けは、【ロングショート④】ステップ3の補足事項となります。なお、【ロングショート④】は【ロングショート③】を計算式に変換したものとなります。
この記事に興味を持たれましたら、【ロングショート③】→【ロングショート④】→この記事の順番で読んでいただければ理解が深まると思います。
【ステップ3:ロング候補とショート候補を組み合わせて銘柄ペアを作る】
12. β値の変数を決める
∟ 「 x < z { (過去n日間の終値と過去n日間のベンチマーク変動率の共分散)
÷
(過去n日間のベンチマークの分散) } ≦ y 」
→ (例)x:0.8 ~ y:1.0, x:0.8 ~ y:1.2, x:1.0 ~ y:1.2 など
→ (例)n:120, n:240 など
※ 一般的に、xとyの数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる。
※ 参考 COVARIANCE.S 関数(標本共分散)
※ 参考 VAR関数(標本分散)
標本共分散はCOVAL関数(分母:「n」)ではなく、COVAL.S関数(分母:「n-1」)になります。そのため、分母は「n-1」で計算します。これ、知らない人けっこういると思います。
マーケット分析をする場合、十分な標本データを使うことを前提にしているので、COVAR関数とVARP関数の組み合わせを使っても実際、それほど大きな誤差は生じません。
※ 参考 COVAL関数(母集団共分散)
※ 参考 VARP関数(母集団分散)
そのため、厳密な計算式を使ってエクセルで売買システムを組まれる方は、分母を「n-1」としたCOVAL.S関数とVAR関数を組み合わせてください。共分散にCOVAL関数(分母:「n」)を使って分散にVAR関数(分母:「n-1」)を使うと分母の単位がズレてしまうから、わけのわからない数値が出力されてしまいますよ(笑)。ソフトは指示した通りにしか動いてくれませんから気をつけてくださいね(¬_¬)...
※ 参考【分散】
※ 参考【共分散(相関係数の項目内)】←読んだけど対して参考になりませんw
13.
ボラティリティの変数を決める
∟ 「 x < z { (ベンチマークの過去n日間の最高値 - ベンチマークの過去n日間の最安値)÷
ベンチマークの過去n日間の最安値 × 100 } ≦ y 」(簡易式で説明)
→ (例)x:0.8 ~ y:1.0, x:0.8 ~ y:1.2, x:1.0 ~ y:1.2 など
→ (例)n:120, n:240 など
※ 一般的に、xとyの数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる。
※ 参考 MAX関数(最小値)
※ 参考 MIN関数(最大値)
14. 株価変動係数を決める
∟ 「 x < z { 過去n日間の標準偏差 ÷ 過去n日間の平均 } ≦ y 」
→ (例)x:0.8 ~ y:1.0, x:0.8 ~ y:1.2, x:1.0 ~ y:1.2 など
→ (例)n:120, n:240 など
※ 一般的に、xとyの数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる。
※ 参考 STDEVP関数(母集団標準偏差)
※ 参考 STDEV関数(標本標準偏差)
※ 参考 AVERAGE関数(単純平均)
対象が母集団の場合は、STDEVP関数を用いる。その場合、分母は「n」を使う。対象が標本の場合は、STDEV関数を用いる。その場合、分母は「n-1」を使う。今回は、標本を使うから、STDEV関数になります。
これも、厳密にやろうとすれば、COVAL関数→VARP関数ならばSTDEVP関数、COVAL.S関数→VAR関数ならばSTDEV関数、のように分母を揃えてあげてくださいね。
ただし今は、「ロング候補とショート候補で同じくらいの銘柄」を合わせる作業をしているわけだから、別にどっちでも良いといえばどっちでも良いですが(ホントはよくないけど)。
※ 参考 【標準偏差】
15. 相関係数の変数を決める
∟ 「 x < z { 過去n日間の相関係数の合計 ÷ n日 } ≦ y 」
→ (例)x:0.5 ~ y:0.8, x:0.7 ~ y:0.9 あるいは x:0.7 ~ など
→ (例)n:120, n:240 など
※ 一般的に、xとyの数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる。
※ 参考 CORREL関数(相関係数)
上の計算式の分子を見ると「え、またですか?」となると思いますが、ここは気にしなくても大丈夫です。
理由は、「分母」と「分子」が打ち消し合うので、分母が「n」か「n-1」かは、ここでは考える必要はありませんね。
※ 参考 【相関係数】
16. 回帰直線の傾きの変数を決める
∟ 「 x < z { 過去n日間のサヤの傾き × (n - 1) ÷ (過去n日間の最高値 - 最安値) × 100 [%] } ≦ y 」[1]
→ (例)~ y: 5, ~ y:10 など
→ (例)n:120, n:240 など
※ 一般的に、xとyの数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる。
※ 参考 LINEST関数(回帰分析)
[1] この計算式は、価格差(サヤ幅)の枚数調整に利用します。この計算式を使う理由は、建玉数を増やしていくと、サヤの値動きは同じであっても、回帰係数の値は、建玉数に比例して値が大きくなってしまうことを回避するため。このような計算方法を採用することで、「比率」をベースとして回帰係数の値も一定になることにより、建玉数の大小にかかわらず比較ができるようになります。
※ 参考 【回帰分析と回帰係数】
17. 回帰方程式の決定係数を求める
∟ 「 z { (yの変動 - 残差平方和)÷ yの変動 × 100 [%] } 」
※ 参考 DEVSQ関数(決定係数)
決定係数と自由度調整済の決定係数を比較すると、自由度調整済の決定係数の方が小さな値となります。また、n が小さな標本では2つの値の差が大きくなります。おそらく分析の際、一定数以上の標本データを使うはずですからそこまで誤差は生じないとおもいますが、これも厳密にやろうと思ったら、調整済決定係数を使うとよいでしょう。エクセルだと「補正R2」の値が調整済決定係数となります。
※ 参考 【回帰方程式と決定係数】
18. 価格差(サヤ幅)グラフと相関図を作成する
∟ 「 z { (B銘柄の株価 × B銘柄の株数) - (A銘柄の株価 × A銘柄の株数)
} 」(価格差)
and, or
∟ 「 { (B銘柄の株価 × B銘柄の株数) ÷ (A銘柄の株価 × A銘柄の株数)
} 」
(価格比率)
※ 参考 価格差(サヤ幅)グラフを作る(Yahoo! Finance HP)
サヤ幅の計算には、大きく分類して上記2つの方法が一般的です。投資金額が小さければ「価格差」でも十分だと思いますが、投資は「価格比率」で考えるのが基本です。
たとえば、「株価1,000円の銘柄が250円下落し750円(1,000円-250円)になったとする。次に、株価750円の銘柄が250円下落し今度は500円(750円-250円)になったとする。どちらも「価格差」で見れば250円の下落だが、「価格比率」で見れば前者は25%(250円÷1,000円×100[%])の下落、後者は33%(250円÷750円×100[%])の下落となる」。この考え方けっこう大事です。
なお、価格差(サヤ幅)の計算には、
∟ 「 z {(過去n日間の株価 - n日前の株価) ÷ n日前の株価 × 100 [%] } 」
といった算出方法もある(いわゆる百分率法)。ただし、ここでは、投資金額はファンドの運用のような大きな金額のトレードを想定していないため、上記18.の方法で説明する。
【ロングショート④ ステップ③補足】
ステップ3の作業は、ヘッジ取引を行うトレーダーにとっては最重要項目となります。おそらく必要最低限の基本概念はこの中に入っているはず、たぶん。。。
ヘッジファンドの「ヘッジ」は、「塀」とか「垣根」を意味します。おそらくほとんどのヘッジファンドや生命保険会社、企業年金などの運用担当者の方々は上記のような基本的な考え方を組み合わせたアイデアに基づいてスクリーニングをしていると考えられます。
このブログはヘッジ取引の概念を用いたロングショートに特化して書いているので、基本的には1対1の銘柄ペアに関する記述がメインとなりますが、
たとえば運用資金が大きな個人投資家の方は、ご自身の保有するロング(買い持ち)ポジションに対して、相場の過熱感を見極めながらベンチマークのポジションを想定下落幅に合わせて、適度にショートポジション(空売り)を調整しつつ、「暴落」という突然の嵐の襲来に備えてみてはいかがでしょうか?
(例:保有株を「100%」と考えた場合、「100%に対してベンチマークを保有ポジションの1%分だけカバードショートする、あるいは100%に対してベンチマークを保有ポジションの5%分だけカバードショートする」など)
※ 注意点補足 ステップ1は、「一般的に、数値が大きくなるほど高リスク、数値が小さくなるほど低リスクとなる」のに対し、ステップ3は「一般的に、数値が大きくなるほど低リスク、数値が小さくなるほど高リスクとなる」。ステップ1とステップ3は数値の示す意味が逆転するので注意のこと!
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