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2014年1月21日 (火)

ロング・ショートについてのお話 その⑤

 

お知らせ【ブログを移転しました

 

【銘柄選択の基準 その②】

 

ここでは、銘柄選択の基準 その①で抽出した銘柄ペアのリストの中から、とくに銘柄ペアの「価格差(サヤ幅)」の部分について分析を行う方法を説明する。これにより「価格差(サヤ幅)」の値動きのみを取引するロングショート戦略のハードウェアの仕組みが完成する。一部の注意点さえ守れば、今までの処理手順は変えてもかまわないし、項目によっては重複処理になるのでどちらかを省略してもよいだろう。

 

なお、FXでサヤ取りを試してみたい方は、コラム【FX(外国為替)を使ったサヤ取りは有効か?】を参照ください。

 

 

ステップ4:投資適格ペアを決定する

 

 

1. 投資金額が大きすぎない銘柄ペアを選択する

 

理由:売買代金は「(ロング銘柄の現在株価×株数)+(ショート銘柄の現在株価×株数)」で算出される。これは投資家自身の投資金額に合わせて選択する。

株価が100円で最低取引単位が1,000株の銘柄であれば10万円、ペアにすると20万円くらいでポートフォリオが組める。同じように株価が500円で最低取引単位が100株の銘柄であれば5万円、ペアにすると10万円くらいでポートフォリオが組めることになる。

このように、投資金額が比較的小さな銘柄ペアのポートフォリオを組み合わせたほうがより多くの銘柄に分散して投資できることになるため、投資金額はたとえば50万円以下、70万円以下、のように設定するとよいだろう[1]

 

2. 「価格差(サヤ幅)」の変動率が大きすぎない銘柄ペアを選択する

 

理由:この処理は銘柄ペアの「価格差(サヤ幅)」について、おおよその拡大幅を推測するために使う。一定の変動率の範囲内で行ったり来たりしているような銘柄ペアの「価格差(サヤ幅)」はレンジ相場を想定した取引が期待できる。

ここでは、「価格差(サヤ幅)」の移動平均線を用いるが、グラフで言えばレンジ相場のように、なるべく「直線」かつ「水平」に近い状態で推移しているほうがよい。10%以下、できれば5%以下にするなど変動率は小さければ小さいほうが望ましい。

 

3. 「価格差(サヤ幅)」の不均衡率が大きすぎない銘柄ペアを選択する

 

この手順は、【ロングショート④】ステップ3の「回帰方程式の近似直線の±n%の誤差の計算」と処理の意味合いは同じこと。回帰直線では「傾きa」に対して誤差の範囲を抽出処理するのに対して、この処理は価格差の「移動平均線」に対して不均衡率を計測することになる。サヤ幅の処理項目なので、ステップ4に組み込んだが、こちらの手順を採用する場合は、【ロングショート④】ステップ316.17.の部分は省略してもよい。

なお、その場合はこの処理をステップ316.17.の部分に組み込む必要がある。理由は、価格差(サヤ幅)グラフを作成する以前の段階で「不均衡率x%以内」といったように枚数調整しておかないと均衡率が定まらないため、使い物にならないチャートが出力されてしまいますからね(笑)

この処理は、取引枚数を調整するために使うが、実際の取引では最低取引枚数などの条件が加わるため、均衡率を完璧に合わせようとすると今度は取引金額が莫大になってしまう可能性が生じる。そのため、1.では「売買代金」でフィルターをかけ、さらにこの処理によって「均衡率」のフィルターをかけて銘柄ペアを絞り込む必要がある。たとえば「取引金額50万円以内かつ不均衡率10%以内」のように設定すれば取引条件に合うものだけを抽出できるようになる。不均衡率は10%以下、5%以下など小さければ小さいほうが望ましい。

13_640x444回帰分析と回帰係数】より

回帰分析の項目ですでに説明したが、上の図のナナメの直線が移動平均線だと考えると非常にわかりやすい。2.で説明したのは、この傾きを示すaの線が「直線」かつ「水平」に近い状態であったほうがいいということ。また、dはこの場合、aに対して誤差がありすぎると、ロングとショートの銘柄の組み合わせ自体がうまく適用されていないことを意味する。例としては、エントリーの段階でロング100万円・ショート70万円だとあまりにも誤差がありすぎて(誤差30%)、うまく行かない可能性があるという意味。そのため、1.の投資金額が100万円以内として、誤差+10%に設定すれば、「ロング:95万円・ショート98万円」のような候補のみが抽出されることになる。

09_640x381回帰方程式と決定係数】より

すなわち、誤差が小さければ小さいほど適格ペアということになる。


4. 標準偏差σ±nを超えた組み合わせを選ぶ

 

理由: ロングショートは銘柄ペアを組み合わせることにより人工的なレンジ相場での取引を想定しており、逆張りエントリーが有効であると考えられるため。※【逆張り投資の注意点

 

1.2.3.の条件を満たしたものは投資適格銘柄となる。最後に、実際の仕掛けを行うに当たり、標準偏差σの±nを超えたものを抽出する。当ブログでは個人投資家に人気が高いボリンジャーバンドを用いて仕掛けを行う方法について説明する。

ボリンジャーバンドは通常、トレンドが出ているときは「順バリ」(終値が上のバンドを上抜いたら買い、下のバンドを下抜いたら売り)、レンジ相場のときは「逆バリ」(終値が上のバンドを上抜いたら売りシグナル、下のバンドを下抜いたら買いシグナル)として投資判断に利用される [2]

 

一般論としては、

 

「過去20日間のボリンジャーバンド+σ2を上抜けたら逆張りで仕掛ける」

「過去20日間のボリンジャーバンド-σ2を下抜けたら逆張りで仕掛ける」

 

といった使い方をする。その根拠として頻繁に取り上げられるのが、一時的に拡大した「価格差(サヤ幅)」は、「①マーケットを正規分布と仮定した場合、②標本データの95.44%は標準偏差σ±2のバンドラインの中に収まっていると考えられるため、③時間の経過とともに価格差(サヤ幅)は、均衡点である移動平均線に向かって収斂して行くだろう」、という確率論に基づいて説明されている。ただし、これは一般論だから、別に過去25日でもいいし、σ1とかσ3で仕掛けてもよいです

たとえば、銘柄ペアごとに変動の大きさに合わせて2.で述べた「価格差(サヤ幅)」の平均変動率に合わせて数字を組み変えてみてもよいと思います。ただし、σ3を超えてしまう場合はたしかに異常値であると言えるものの、そのままズルズルと人工的なレンジ相場から突き抜けてしまう可能性もあるため、エントリーは行わないほうがいいでしょう。特に、一般的に順張りで言われている「バンドウォーク」と呼ばれる現象(バンドラインに沿って移動平均線が吸い寄せられているようなチャート)はトレンド発生が示唆されていると考えられるため、この傾向が強いように思われます。もちろん、「価格差(サヤ幅)」が拡がれば拡がるほど、「期待利益率」は高くなるため、どちらの方向に「賭け(ベット)」するかはディーラーであるあなた次第ですが(笑)

何度も繰り返しますが、実はこの「科学的根拠[3]」と言われる説明には重大な欠点があります(必ず、【逆張り投資の注意点】を参照してほしい)。この欠点を理解できないと、レンジ相場であっても逆張り投資はうまく行かない可能性が高いと思います、たぶんね。

なお、ボリンジャーバンドは単体で使うと非常に欠点が多いため、対策として以下の2点を上げておく。

 

4-1. 過去一定期間の価格差(サヤ幅)が最大値に達したらエントリーする

 

過去一定期間の価格差(サヤ幅)は大きな周期性変動と小さな周期性変動に分かれる。そのため、小さな周期性変動でエントリーを行った場合、いわゆるダマシに引っかかり、価格差(サヤ幅)がさらに拡大し続けることがある(いわゆる又裂き)。そのため、過去一定期間の価格差(サヤ幅)が最大値に達した場合にかぎりエントリーを行うことは有効と考えられる。

なお、この方法を使うとエントリー判断はすべて価格差の最大値が基準となり、ボリンジャーバンドは使わないことになる。理由は、最大値に達したペアはすでにバンドラインを上回っているはずですから。それゆえ、正確に言えば「併用」という言い方はやや誤解がありますね。

 

4-2. 過去一定期間の価格差(サヤ幅)の周期性を分析する

 

過去一定期間の価格差(サヤ幅)は大きな周期性変動と小さな周期性変動に分かれる。周期性の分析にはいわゆるフーリエ解析と呼ばれる手法があり、この解析処理を行うことで、価格差(サヤ幅)をグラフで視覚的に判断するのに加え、周期性を「周期関数」として数値化することができることになる。そのため、投資候補となった銘柄ペアがおよそ何日間隔でサヤ幅が開閉を繰り返すのかを判断する手掛かりになると考えられる。

 

上記4-1.4-2.、あるいはそのいずれかを併用してエントリーを行うとよいだろう(厳密にやりすぎるとスクリーニングの際、投資対象がかなり絞られてしまいますが)。

 

ロングショート戦略にかぎらず、どんな投資方法にも必ず弱点が存在するので、相互に補完し合わないと実践では全く使い物にならなくなってしまう論理式が多いように思います。「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、ひと通り書き終わるまでもう少しお待ちください。「木」の部分だけを見て個別に説明していくとキリがないので、いずれまとめて説明します。

 

 参考 【標本と推測統計】【ボリンジャーバンド】【逆張り投資の注意点

 

 

[1] CFD(差金決済取引)を使って取引すれば、単元株同士で両建てできるし売買手数料も安いから資金が少ない学生さんにはオススメかも(オーバーナイト金利に注意)。ほとんど利益は出ないかもしれないけど、今は実践(実戦)を兼ねた勉強と割り切って、可能なかぎり銘柄ペアを分散して少しでも多くのポートフォリオを作ることを意識してほしい。ロングショートは銘柄ペアを組み合わせるため、それ自体が最小単位のポートフォリオ投資ではあるけれども、とにかく「分散して投資を行う」という考え方が大事。

銘柄ペアの中には利益が出るペアだけではなく、損失が出るペアが一定の確率でどうしても混じり合ってしまいます。これは多産多死の海洋生物のようなもの。たくさん卵を産んで孵化させても、残念ながらすべての銘柄ペアは陸にたどり着くことはできず、そのままズルズルと沖へ流されてしまうペアもあります(この例だと負けるペアのほうが多くなってしまうけど、あくまでもわかりやすい説明として使いました)。そのようなペアはロスカットで見切りをつけて、残った金額は新たな銘柄ペアに投資します。非常にドライな考え方ですが、マーケットは戦場です。お忘れなく!

 

[2] 逆張り投資の注意点のコラムでも述べたが、マーケットは正規分布にはならない。そのため、「正規分布を前提として作られたこの方程式から算出された価格は現実の世界では成立しない」という批判がある。その欠点を少しでも補えるように、【標本と推測統計】のところでは、「母集団」の中から抽出した「標本」という一部の情報を手掛かりに、「母集団」の姿を推測していく方法を述べた。そこでは、得られた数値が信頼に足りる情報であると言うためには、統計処理を行う上で、30程度の標本数が最低限必要となることを述べた。

統計学はそもそも現実のデータを加工して平均化したり、たとえば「象」と「犬」のように違う大きさの生き物の身長や体重を均一化して比較したりするため、分析後のデータだけを見ると、分析前の元データがどうなっていたのか、失ってしまう情報がたくさんある。さらに、発生する事象を一部のデータから全体の姿を推測していくため、現実に起こっている母集団の動きを100%的中させることは不可能である。よって、確率・統計を基に作られたテクニカル分析も100%の科学的手法ではないということを忘れずに!

 

[3] そもそも確率・統計を根拠としたテクニカル分析はすべて「科学的投資法」に分類される。過去のデータを分析して、その結果をもとに機械的に売買を繰り返していくわけだから、試行回数を増やせば増やすほど、理論上はバックテストの結果に向かって利益率は収斂していくことになる。そのため、2~3回くらいで上手く行かないからといって安易にルールを変更せずに続けていけば、結果は出るはずです(理論上はね。しょせんは後ろ向いて足跡を確認しているだけですがw)。

実は、投資がうまく行かない原因はルールを一方的に無視する投資家側にあったりするわけです。投資がうまくいかないと言っている人の発言には2つの解釈が考えられます。23回やってみて言っているのであれば、試行回数が少なすぎです。30回くらい続けないと偶然の発生確率が高すぎます。また、何回やってもマイナス収支になってしまうと言っているのであれば、投資銘柄が少なすぎです。最低でも30銘柄くらいに分散しないとポートフォリオの分散効果が期待できません。なお、いずれにも該当しない場合は、売買ルールそのものを見直したほうがよいのでは?

 

 

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コメント

さや取りは、大きな投資元本が必要ですよね。
そういう意味では、記事にある個別株CFDでのさや取りはおもしろそうですね。
情報ありがとうございました。

ぐぐってっみると、SAXO系、IG証券、ひまわり証券、、といろいろあるんですね。

saru999さん、コメントありがとうございます。

そうですね、分散効果を期待するには株式のサヤ取り(ロングショート)の場合、最低でも3,000~5,000万円くらいの資金量が必要になるかと思います。ただ...100万円くらいで挑戦しようとする学生さんがいたのでCFDを提案してみました(笑)。

もっとも、カウンターパーティーとの相対取引になるので流動性がどのくらい確保できているかは不明ですが。。。

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