« ロング・ショートについてのお話 その② | トップページ | コラム その①【グローバル社会と日本経済の未来について思うこと】 »

2013年12月 1日 (日)

ロング・ショートについてのお話 その③


お知らせ【ブログを移転しました

 

【銘柄選択の基準 その①】

 

ロングショートはいかなる相場状況であってもマーケットに対して、最適と思われる銘柄ペアを組み合わせ両建て取引を行うことにより、相場変動によるリスクをある程度吸収することが期待できる。これはマーケットニュートラル戦略の基本的な考え方となる

さらに、複数の銘柄に分散投資を行うことによって、個別銘柄同士のリスクをポジション全体から相対的に減少させる効果が期待できる(銘柄ペアを増やすほど「大数の法則」が働くため)。

なお、FXでロングショートを試してみたい方は、【FX(外国為替)を使ったサヤ取りは有効か?】を参照ください。

以下、3段階に分けて銘柄選択を行っていく。

 

 

 【ステップ1:取引市場・出来高・時価総額・売買代金の選択】

 

 

1. 日経平均採用銘柄など東証1部上場の大型株であること。

 

理由①:小型株だと出来高が小さく、売りと買いの価格差が大きく開いていることがあり、成り行き注文だと予定している価格で約定できないことがあるため。また、小型株だと業績に問題があったり、ボラティリティ(株価変動率)が極端に高すぎることがあるため投資対象からは外す。

理由②:新興市場にも大型株は存在するものの、急騰・急落など予想外の動きをすることもあるので投資対象からは外す。

 

2. 出来高・時価総額・売買代金ともに大きい銘柄であること。

 

理由:出来高は1.と同じく、ある程度の流動性がないと思わぬ価格で約定してしまうため。時価総額や売買代金の小さな企業は、仕手筋が介入すると、値動きがメチャクチャになり、ペア銘柄との連動が崩れやすい。そのため仕手筋が簡単に介入できないような大型株であり、出来高・時価総額・売買代金ともに大きい銘柄を選ぶこと。

 

3. 現在株価が比較的低い銘柄を選択すること。

 

理由:一般的に、株価の安い銘柄はボラティリティ(変動率)が高くなる傾向にあるため[1]、高収益が期待できる。よって、ある程度のリスクを許容できればロングショート向きといえる。なお、株価が低い銘柄=低位株[2]ではない。株価が安くても大型株は存在する。ヘッジ取引であっても低位株のサヤ取りはリスクが高くなるため、1.で述べた大型株を選択するに越したことはない。

 

[1] たとえば、株価が「100円の銘柄×10」と株価が「1,000円の銘柄×1」を組み合わせた場合、みかけ上はニュートラルポジションが組めているようにも見える。しかし、「100円の銘柄」が1円上がると変動率は1%。逆に、「1,000円の銘柄」が1円上がると変動率は0.1%にしかならない。この場合、100円の銘柄の変動率は1,000円の銘柄の変動率の10倍となるため、「100円の銘柄×10」が1%動くと10円が動くことになり、「1,000円の銘柄×1」が1%動くと1円しか動かないというボラティリティーニュートラルの問題が生じる。こうなると、100円の銘柄の変動が大きすぎて、取引がうまく行かなくなる可能性が高い。すなわち、1,000円の銘柄がリスクヘッジとして機能しなくなるという意味。このため、ボラティリティを同じくらいの大きさに合わせる作業が必要となる。詳細は10.11.を参照のこと。

[2] 低位株の問題点として、低位株の中には仕手株が潜んでいる可能性が高い。仕手株は一般的に、浮動株比率が低く、「株価の安い低位株」で、「空売りが可能」で「発行株数が少ない」銘柄が選ばれることが多い。

防御策としては、低位株を取引対象にしたい場合、「空売りが可能」は前提条件として絶対にはずせないので、「発行株数が少ない」という部分に注目すれば、スクリーニングの際、「出来高の数値を大きめにする」ことで、ある程度回避できるだろう(大型株の銘柄ペアであればあまり気にする必要はないと思われる)。また、「標準偏差の数値を小さめにする」、などの方法も考えられる。他にもスクリーニングの際に、いろいろ工夫してみてください。

ロングショートの一番の恐怖は「又裂き現象」、つまり、ロングした銘柄が下がり、ショートした銘柄が上がってしまうこと。特に、ショートした銘柄が踏み上げによって爆上げしてしまったら、もはやサヤ取りどころではなくなってしまいます(いわゆる「コツコツドカン」というやつね)。ボラティリティの高い銘柄は、リターンが大きい分、リスクも大きいので、上記の内容を理解した上でトレードしてみてください。これけっこう大事です。。。


4. 賃借銘柄のみを抽出する。

  

理由①:ショート(空売り)できませんからねw

理由②:現段階では抽出した銘柄がペアとなる銘柄に対してロングになるかショートになるかわからないため

理由③:ロングも信用取引で行うことができるため。

理由④:賃借銘柄は信用取引、空売りができるという意味である程度の出来高が期待できる。そのため、ロングショートでは賃借銘柄のみを両建て取引するのが望ましいと思われる。


 

【ステップ2:銘柄をロング候補とショート候補に分類する】

 

 

5. 株価水準指数がベンチマークに対して、(相対的に)低い銘柄をロング候補に、(相対的に)高い銘柄をショート候補に分類する。

 

理由:株価指数とは、株価の値動きや株価の水準を示すために数値化されたもの。過去のある基準点の株価水準を決定し、現時点での株価水準が基準点と比較して高い水準か低い水準にあるかということを数値化したもの。この場合、基準点を6か月前とか1年前に設定する。6か月という期間は、信用取引の期限であるため、最低限このくらいは遡ったほうがよい。また、株価指数の水準は通常TOPIXをベンチマークに用いる。例えば、現時点の株価は1年前のTOPIXと比較した場合、相対的に割高であるのか割安であるのかを判断する、といった使い方をする。よって、ベンチマークの基準と比較した場合、TOPIXチャートの上にあるものがショート候補、下にあるものがロング候補となる。理論上は、TOPIXのチャートを挟んで割高なものはTOPIXチャートに向かって下落し、割安なものはTOPIXチャートに向かって上昇すると考えられるから[3]

↓こんなかんじ(1年間のTOPIXを基準点として、トヨタ自動車:7203と本田技研工業:7267を比較した場合。この場合は、ホンダをロングしトヨタをショートするということ)。

Kabukasuijun_2

[3] ヘッジファンドの謳い文句は、「ベンチマークに対して相対的にプラスリターンを目指すアクティブ運用に対して、いかなる相場状況であっても絶対リターンを目指す」とされているものの、結局は上場株を取引する以上、ベンチマークを挟んでポジションを連動させてスライドしていかないとニュートラルポジションが組めないと思うのですが。これはおそらく文字通りの「絶対」という意味ではなくて、「相対」という言葉に対抗する表現くらいに解釈するべきなのでしょうね。

割高銘柄グループと割安銘柄グループはベンチマークに対して相対的に決定されるわけだから、ベンチマークを基準にペッグしてあげないと、(ボックス相場ではまぁ...上手く行くかもしれませんが)、上昇相場や下落相場ではロスカットの嵐になりますよwww

 

6. 信用倍率がベンチマークに対して、(相対的に)低い銘柄をロング候補に、(相対的に)高い銘柄をショート候補に分類する。

 

理由:信用倍率は、「信用買い残高÷信用売り残高」で算出される数値。信用倍率が高い銘柄は、株価が下がりやすい傾向にあり、逆に、信用倍率の低い銘柄は株価が上がりやすい傾向にある。そのため、信用倍率は、ロング銘柄は信用倍率が低いもの、ショート銘柄は信用倍率が高いものを選ぶ。なお、信用売り残高>信用買い残高となると、逆日歩(品貸料)が発生することがある。小型株(品薄株)だと極端な逆日歩が付く場合もあるため、やはり信用倍率の観点からも1.で述べた大型株を選択したほうがよい。

 

7. 株価収益率(PER)がベンチマークに対して、(相対的に)割安な銘柄をロング候補に、(相対的に)割高な銘柄をショート候補に分類する。

 

理由:PERPrice Earnings Ratio(株価収益率)とは、(株価÷EPS)で算出される数値。株価がEPSの何倍まで買われているかを数値化したもの。ベンチマークの基準と比較した場合、相対的にベンチマーク(TOPIX)より割高なものがショート候補、割安なものがロング候補となる。これは、参考までに使うくらい。根拠は、実績PERではなく、予想PERが使われるため。予想って経営者の裁量判断も入るわけですからね、数字に100%の客観性がないと考えられるからです。

 

8. 株価収益率(PBR)がベンチマークに対して、(相対的に)割安な銘柄をロングに、(相対的に)割高な銘柄をショートに分類する。

 

 PBRPrice Book-Value Ratio (株価純資産倍率)とは、1株当たりの純資産[4]に対し、株価が何倍まで買われているかを数値化したもの。ベンチマーク(TOPIX)の基準と比較した場合、相対的にベンチマークより割高なものがショート候補、割安なものがロング候補となる。これも、参考までに使うくらい。理由はPERと同じ。

[4] ここで使用される純資産とは、貸借対照表上の「純資産の部」から少数株主持分および新株予約権等を除去した金額、すなわち自己資本(株主持分)を意味する。

 

 

 【ステップ3:ロング候補とショート候補を組み合わせて銘柄ペアを作る】

 

 

9. β値(市場感応度)が同程度の銘柄ペアであること。

 

理由:β値(市場感応度)とは、市場全体の値動きであるベンチマーク(例として日経平均、TOPIXなど)に対し、個別銘柄がどのくらい変動しているかを数値化したもの。「(個別銘柄とベンチマーク変動率の共分散)÷(ベンチマークの分散)」で算出される数値。ベンチマークの絶対値「1」に対して、個別株が「1」の場合、ベンチマークが「5%」上がればその株も「5%」上がり、「5%」下がればその株も「5%」下がるという意味。したがって、採用するペア銘柄が1以上ならば、(ベンチマークに対して相対的に)ハイリスク、逆に1以下ならば(ベンチマークに対して相対的に)ローリスクとなる。

 ペア銘柄の変動を山の大きさに例えると、以下のようなイメージになる。β値を同程度に合わせないと、一方の銘柄が他方の銘柄に対して十分なヘッジ機能を果たせず、結果としてβ値の高い銘柄の片張り投資をしているのと同じことになってしまうため注意すること。

04_640x406

※ 参考 偏差変動分散標準偏差正規分布標本と推測統計まとめ①

※ 参考 数学が苦手だった人向けに

 

10. 過去の一定期間における株価変動率(ボラティリティ)が同じくらいの銘柄ペアであること。

 

理由:株価変動率(ボラティリティ)とは、「(過去の一定期間の最高値-過去の一定期間の最安値)÷過去の一定期間の最安値×100」で算出される数値(簡易式を使って説明)。たとえば、過去1年間の最高値が600円、最安値が300円だった場合、(600300)÷300×100100%、つまりボラティリティは100%となる。

理由は9.の説明と同様に、山の大きさを同じくらいの範囲に揃えてあげないと、一方の銘柄が他方の銘柄に対して十分なヘッジ機能を果たせず、結果として片張り投資をしているのと同じことになってしまうため注意すること。

※ 参考 偏差変動分散標準偏差正規分布標本と推測統計まとめ①

 

11. 過去の一定期間における両銘柄の株価変動係数が同じくらいの銘柄ペアであること。

 

 理由:株価変動係数は「標準偏差÷平均」で算出される数値。理由は9.10.の説明と同様に、株価変動にバラツキがありすぎると、一方の銘柄が他方の銘柄に対して十分なヘッジ機能を果たせず、結果として片張り投資をしているのと同じことになってしまうため注意すること。

※ 参考 偏差変動分散標準偏差正規分布標本と推測統計まとめ①

 

12. 相関係数がある程度高い銘柄ペアを組み合わせること(高すぎないこと)。

 

 理由:ペア銘柄に、ある程度の連動性がないとこのトレードはそもそも前提条件が成立しない。また逆に、相関係数が高すぎると、利幅が狭く、ローリスク・ローリターンとなり、利益に対して手数料の占める割合が高くなってしまうので注意すること。

ちなみに、サヤ取りのイメージをいろんな人に聞くと、「あー、知ってますよ。相関係数が同じくらいのペア銘柄を同時に買い建てと売り建てして、サヤが閉じたら決済するやつでしょ?」←正解です。正解なんですが、私は相関係数よりも、β値(市場感応度)や株価変動係数のほうがずっと重要だと思うんですよね...

 理由:この戦略の本質が、「ペア銘柄同士がリスクを打ち消し合うことにより、マーケットに対して、中立的(ニュートラル)な立場を取ることで、一方の銘柄が他方の銘柄に対しての保険機能を果たす」、というところにあるのだと考えるからです。イメージとしては、最適な合成ポジションを組むことによって、次から次へとボックス相場を作り続けていく感じでしょうかね。なお、相関係数の数値だけでは元データの情報が不足している可能性が高いため、相関図(散布図)と一緒に使うとよいだろう。また、回帰分析により、相関図の散らばり具合の平均を通る回帰直線を引くときは、決定係数を算出してデータの当てはまり具合まで併せてチェックするとよいだろう。

  参考 【相関分析と相関係数】【回帰分析と回帰係数回帰方程式と決定係数まとめ②

 

13. 値動きがなだらかに上下し、かつ周期的にうねりのある銘柄ペアであること。

 

 理由:サヤの伸縮に規則性があるため、このトレード向きといえる。いろんな本に目を通してみましたけど、イメージ図に書いてあるようなキレイな伸縮グラフの組み合わせは、なかなかないですよw これはね、実際トレードやってみればよ~くわかります。

この周期性の分析には、フーリエ解析という方法を用いて数値化することもできるが、裁量トレードの場合、チャートを用いて視覚的に判断するのがもっとも簡易的な方法となる。

 

以上まとめてみましたが、一般論としてはこんなところでしょうかね。計量分析のソフトのようにあまりにも厳密にやりすぎるときりがないので、項目をかなり削りましたが、ヘッジファンドの運用など実際のヘッジ取引をする上で、必要最低限重要であろう「基本概念」は上記に入っているはずです。使えそうなアイデアがあればトレードを行う際、参考にしてみてくださいね。なお、当ブログではここで一度スクリーニングを区切り、書ききれなかったものは後日追記します。

 

せっかくなんでちょっと書いておこうかな。

 

テクニカル分析好きな人多いと思うんだけど、結局は過去のデータを使うわけだから、未来に対しても必ずしもそうなるとは限らないわけです。これはプロでも素人でも同じ。特に、医学の臨床データなど自然科学分野の統計データとは違って、金融・経済などの社会科学分野は、人間の心理とか投資家各々の相場観とか、単純に数値化できない外部要因がたくさん絡んでくるので、ノイズによるブレが多いわけです。

 また統計データって、母集団や標本数、期間などの設定を少しいじれば比較的簡単に、データをいくらでも都合良く見せることができるわけです(例としてプロフィットファクターを高めに設定する自動売買ソフトなど)。だから教科書やセールストークを過信しないこと、そう、理論と実践は異なるものなのですよ。絶対に儲かる黄金律など存在しないのだ!

 

コラム・その他】←ひまつぶしに読んでね♪


トップージ


にほんブログ村 先物取引ブログ サヤ取りへ
にほんブログ村


金融・投資 ブログランキングへ

 

« ロング・ショートについてのお話 その② | トップページ | コラム その①【グローバル社会と日本経済の未来について思うこと】 »

トレード関連」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
勉強させてもらっています。

専門用語も多くて私にはちょっと難しいのですが、具体例になるほどと頷いたりしています。

読ませてもらったよ、けっこう真面目に書いてるんだな(笑)

必要な資料あれば言ってくれ!

さつきさん

はじめまして、遅くなってごめんなさい。そうですね、専門用語は使わなくても他人に説明できるのが本当の専門家だと思います。リンク張るとか、何か方法を考えてみますね。
私もまだまだ修行中の身ですが、よろしくお願いいたします。

ヨッケ

まとめ作業に完全にハマってしまい、週末これやって完全に休み終わったわw 資料あるだけ全部くれ、全部!

久しぶりに見に来たんだけどさ、もはや学生教育のレベル超えてるだろ(笑)


コメントここでよかった?

補足事項少しずつ追加してたらいつの間にかここまで来てた。

手段が目的化するとはまさにこういうことw

この記事へのコメントは終了しました。

« ロング・ショートについてのお話 その② | トップページ | コラム その①【グローバル社会と日本経済の未来について思うこと】 »

フォト

カテゴリー

  • コラム・その他
    このブログとはあまり関係ないこともひまつぶしに書いてます。実はけっこう読んで欲しかったりします。
  • システム関連
    サヤ取り(ロングショート)に関する補足事項です。【トレード関連】・【統計関連】を理解した上で読んでください。いきなりこのカテゴリー開くと挫折するから要注意。
  • トレード関連
    サヤ取り(ロングショート)に関する記事です。このブログのメインテーマです。
  • 統計関連
    サヤ取り(ロングショート)をする上で最低限必要と思われる内容をまとめています。
無料ブログはココログ
2020年12月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31